ベルリンの壁による分断から東西ドイツ統一へと、激動の現代史の舞台となったドイツの首都・ベルリン。
ヒップな若者文化やアートシーンが世界各国からの旅行者を惹きつけるベルリンの人気者が「アンペルマン」です。
その人気は遠く日本にも及び、「アンペルマン日本公式WEBショップ」までもが開設されているほど。
「アンペルマンの聖地」ともいえるベルリンでは、いたるところでアンペルマンに出会えるばかりか、アンペルマンショップやアンペルマンレストランまでが揃い、まさにアンペルマンづくし。
アンペルマンの誕生と復活にまつわる秘話から、ベルリンでアンペルマンの魅力にふれられるスポットをご紹介します。
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東ドイツ生まれの「アンペルマン」
いまやベルリンの大人気マスコットとなったアンペルマンが生まれたのは、1961年10月13日のこと。ドイツが東西に分割されていた時代、旧東ドイツ(ドイツ民主共和国)での出来事でした。
その生みの親は、旧東ドイツの交通心理学者、カール・ペグラウ氏。当時増加傾向にあった交通事故から旧東ドイツの人々を守るために、ちょっと太っちょなアンペルマンが生まれたのです。
「アンペル」とは、ドイツ語で「信号機」の意味。「信号機」と「男性」をつなげたそのままのネーミングです。日本語に訳すなら「信号マン」といったところでしょうか。
緑は、帽子をかぶった男性がいまにも歩きだそうとしているデザイン。一方の赤は、思いっきり両手を広げた男性が立ちはだかっているかのようなデザイン。
レトロなシルエットがむしろ新鮮さを感じさせるアンペルマンは、「可愛い!」「スタイリッシュ!」と人気を呼び、今では信号機の範疇を超えて、さまざまなグッズに採用されています。
この独特のシルエットが秀逸なのは、単に親しみを感じさせるというだけではありません。頭でっかちでやや太めなアンペルマンは、やせ型の男性が表現された信号機よりも目立ちやすいという機能性も備えているのです。
東西ドイツ統一で消滅の危機に
現在のアンペルマン人気を考えれば想像できないことですが、アンペルマンは一時消滅の危機に瀕していました。
1989年にベルリンの壁が崩壊し、1990年に東西ドイツ統一が実現。
ベルリンの信号機は東ベルリンも含め西側のものに取り換えられるようになり、アンペルマンの信号が粗大ゴミとして捨てられるようになっていたのです。
こうした状況に危機感を募らせたのが、ドイツ南西部・シュトゥットガルト郊外の大学で工業デザインを学んだマルコス・ヘックハウゼン氏でした。彼は、学生時代に東ベルリンを訪れた際に、アンペルマンのデザインに感銘を受けていたのです。
新生ベルリンのシンボルに
1995年にベルリンに拠点を移したマルコス・ヘックハウゼン氏は、処分予定のアンペルマン信号機を無料で譲ってもらい、それを使ってオリジナルのランプを製作しました。
売れ行きは3カ月で約300個という好成績。ランプ製作を機に、マルコス・ヘックハウゼン氏はアンペルマンの生みの親であるカール・ペグラウ氏とも知り合うようになります。
2人はアンペルマンを使ったキャラクター商品の販売を計画。行政やアーティストなどを巻き込んで、アンペルマン信号機を復活させるべく運動を始めました。
その甲斐あって、ベルリン市は2005年にアンペルマン信号機を公式の信号機として採用することを決定。今では西ベルリンも含めベルリン市内の信号機のほとんどが、アンペルマン信号機になりました。
一度は消滅の危機に瀕したアンペルマン信号機でしたが、近年になってむしろその勢力を拡大。統一ベルリンのシンボルにのし上がったのです。
その後アンペルマン人気はドイツ国内外にも波及し、いまやベルリン以外の旧東ドイツの主要都市や旧西ドイツの都市にもアンペルマン信号機が見られるようになり、アンペルマンショップは世界各国からの旅行者で大賑わい。
女の子版「アンペルフラウ」も存在
あまりにも有名になった「アンペルマン」ですが、その女の子版「アンペルフラウ」も存在するのをご存じでしょうか。おさげ髪にスカートをはいたアンペルフラウは、これまた「可愛い!」と大好評。
ドレスデンなどでは実際にこのアンペルフラウが信号機として活躍していて、「スカート着用のアンペルフラウは光る面積が大きく、アンペルマンよりもさらに視認しやすい」という意見も出ているとか。
アンペルマンショップには、アンペルマンのみならずアンぺルフラウのグッズもあり、その人気も徐々に高まっているといいます。
ベルリンのアンペルマンショップ
2018年7月現在、ベルリン市内には8軒の公式アンペルマンショップがあります。そのロケーションは、ベルリン中央駅、ベルリン大聖堂、ポツダム広場など、べルリン観光の定番スポットばかり。
まずご紹介するのは、ミッテ地区のトレンド発信地「ハッケシャー・ホーフ」内にあるアンペルマンショップ。
都会のオアシスとでもいうべきゆったりとした中庭に面した店内は、まさにアンペルマンづくし。
アンペルマンのランプにTシャツ、バッグ、キッチン用品、赤ちゃん用品、文房具、お菓子など、「こんなにあるの!」と驚いてしまうほど、ありとあらゆるアンペルマングッズが揃っています。
店内には「進め」のアンペルマンのオブジェもあり、ファンならもうこの空間だけでノックアウトされてしまいそう。ファンでなくても、多種多様なアンペルマングッズを目にしているうちに、あっという間にアンペルマンが好きになってしまうことでしょう。
特に人気が高いグッズのひとつがハンドタオル。ワンポイントの刺繍が施されたシンプルなデザインなので、年齢や性別を問わずに使えます。最も小さいサイズは、日本の一般的なタオルハンカチよりもやや大きめ。
アンペルマンがデザインされた石鹸やノートも、この通りとってもキュート。
バラマキ土産にするなら、赤と緑、2色の味が楽しめるアンペルマングミがおすすめです。さまざまなジャンルのグッズがあるので、きっと欲しいものが見つかるはず。
「AMPELMANN Shop(ハッケシャー・ホーフ)」
住所:Rosenthaler Straße 40-41
Hackesche Höfe, Hof 5, 10178 Berlin
営業時間:月~木 9:30~20:00、金土9:30~21:00、日13:00~18:00
公式サイト:https://www.ampelmann.de/shops-cafes-und-restaurant/shop-in-den-hackesche-hoefen/
ニベアやリッタースポーツなど、ドイツを代表するさまざまなショップが集まるショッピングエリアにあるウンター・デン・リンデン店は、広々とした空間に小さなカフェスペースも併設。
ショップによって内装や雰囲気が異なるので、いくつかのアンパルマンショップをはしごしてみるのも楽しいかもしれません。
「AMPELMANN Shop(ウンター・デン・リンデン)」
住所:Unter den Linden 35, 10117 Berlin
営業時間:月~土 9:30~21:00、日13:00~18:00
公式サイト:https://www.ampelmann.de/shops-cafes-und-restaurant/flagship-store-unter-den-linden/
ベルリンのアンペルマンレストラン
ベルリンには、なんとアンペルマンの名を冠したレストランまであります。それが、ベルリンの博物館島からもほど近いところにある「アンペルマンレストラン」。
店頭にはやっぱり「進め」のアンペルマンのオブジェ。レストランには店内席のみならず屋外のテラス席もあり、併設のバーを利用すれば、シュプレー川を望む芝生のデッキチェアでのんびりとくつろぐことができます。
レストランの店内は、アンペルマンの置物や本などで彩られたポップな空間。
木の風合いを生かしたナチュラルテイストに、アンペルマンの赤と緑がほどよいアクセントになっています。
砂糖の袋やペーパーナプキンにもアンペルマンマーク。これはファンにはたまりませんね。
メニューは、自慢の石窯焼きのピザをはじめ、パスタやキッシュ、サラダ、スープなど地中海風料理が中心ですが、カリーヴルストやミートボール、ポテトスープといったベルリンらしい料理も。
ケーキやコーヒーやお茶などのドリンク、アルコール類も充実していて、カフェやバーとしても利用できます。
「AMPELMANN Restaurant」
住所:Stadtbahnbogen 159/160 am Monbijou-Park, 10178 Berlin-Mitte
営業時間:12:00~21:00
公式サイト:https://www.ampelmann.de/shops-cafes-und-restaurant/unser-restaurant-und-strandbar/
おわりに
旧東ドイツのシンボルから、新生ベルリンのシンボルへ、さらには国際的な人気マスコットへと成長したアンペルマン。信号機を飛び出し、いまやショップにレストランにとその活躍の場を広げています。
アンペルマンがすでに好きな人もそうでない人も、ベルリンのあちこちで彼の姿を目にすれば、アンペルマンがさらに好きになること間違いありません。