ロマンティック街道の終点、フュッセン観光でしたい5つのこと

ドイツで最も有名な観光街道「ロマンティック街道」の終点の町、フュッセン。

ノイシュヴァンシュタイン城のふもとの村、ホーエンシュヴァンガウに近いことから、ノイシュヴァンシュタイン城への玄関口としても有名です。

それだけに、一目散にノイシュヴァンシュタイン城を目指してフュッセンを素通りしてしまう旅行者も少なくありません。

しかし、フュッセンは中世の町並と豊かな自然が調和した、美しき癒しの町。単なるノイシュヴァンシュタイン城への起点として素通りするにはもったいないほどの魅力が詰まっています

ドイツ最高所の都市・フュッセン

南ドイツ・バイエルン州のアルゴイ地方に属するフュッセン。海抜800メートルほどのところに位置するフュッセンは、ドイツで最も高いところにある都市です。

オーストリアとの国境は目と鼻の先。周辺には、2000メートル級の山脈アンマーガウアー・アルペンや、5つの湖があり、古くから保養地として知られてきました

その歴史は古く、紀元前後にローマ人の重要な基地となり、ヴェネツィアとアウクスブルクを結ぶ軍用道路「ヴィーア・クラウディア」の中継地に。

14世紀にはアウクスブルク領主司教の支配下に入り、1802年にバイエルンに編入されるまで司教による統治が続きました。

第2次世界大戦による被害を受けなかったため、旧市街には中世からルネッサンス期にかけての歴史的建造物がよく保存され、豊かな自然との見事なハーモニーを見せています

フュッセンへのアクセス

フュッセンには鉄道が通っており、アウクスブルクやミュンヘンといった近隣の大都市からは日帰り観光も可能。アウクスブルクからはローカル線列車で約2時間。ミュンヘンからは、ローカル線快速で約2時間です。

ただし列車の本数はあまり多くないので、ドイツ鉄道のホームページで事前に行き帰りの時間を調べておくといいでしょう。

4~10月の旅行なら、ロマンティック街道バスも利用できます。

パステルカラーの可愛い町並みを散策

フュッセンの旧市街には、黄色やピンク、ブルーなど、パステルカラーの建物が並んでいて、なんともメルヘンチック。

なかでもメインストリートであるライヒェン通り周辺には美しい建物が集まっており、とりわけ豪華なだまし絵が描かれた薬局「Stadt Apotheke」が目を引きます

ハーブを使ったハンドクリームや石鹸、はちみつなど、お土産にぴったりの商品も販売しているので、一度店内をのぞいてみるのもいいでしょう。

フュッセンの歴史的建造物は、外壁だけでなく看板も凝ったものが多く、繊細な細工が施された可愛らしい看板は見ていて飽きることがありません

天気がよければ、通り沿いのカフェのテラス席でお茶をしたり、アイスクリームを食べながらそぞろ歩きをしたりするのもおすすめです。

ライヒェン通りの南端にある噴水には、フュッセンの守護聖人である聖マグヌスの像が。この噴水と、背後のホーエス城をおさめた写真は、フュッセンのベストショットのひとつです。

ホーエス城の塔から町を一望

フュッセンのシンボルが、アウクスブルク司教の夏の居城として築かれたホーエス城。南ドイツにおける最も重要な後期ゴシック様式の宮殿のひとつで、現在の姿になったのは16世紀のことです。

町を見下ろす高台に建つ堅牢な城ですが、防衛目的というよりは、司教が自らの権力を誇示する意味合いが強かったといいます。

ホーエス城は、外壁に施されただまし絵で有名。一見、豪華な出窓や窓飾りがあるように見えますが、これらはすべてだまし絵で、本物の細工ではありません。

これを見て「豪華な装飾を施すお金がなかったからではないか」と言う旅行者もいるそうですが、そうではなく、当時としては非常に斬新だっただまし絵という手法をいち早く採り入れた結果、このような姿になったのだとか。当時の人々は、絵でこのような立体的な表現ができることに対し、大変驚いたといいます。

現在、城の北棟はフュッセン市立絵画館、および後期ゴシックとルネッサンス期の作品を集めたバイエルン州立絵画館分館として使用されています。

ホーエス城を訪れたなら、ぜひ敷地内にある塔からフュッセンのパノラマを眺めてみましょう。アルプスの山々とレヒ川、そしてオレンジ屋根の家々が織り成すフュッセンの町並みは、心安らぐ絶景です。

フュッセン市立博物館で「死の舞踏」を鑑賞

フュッセンの守護聖人である、聖マングゆかりの「聖マング修道院」を利用した博物館が、フュッセン市立博物館

8世紀から1802年まで修道院として町の繁栄を支えてきたこの建物は、現在市庁舎と市の博物館として使われています。

バイオリン制作などフュッセンの歴史を物語る展示のほか、修道士の図書室や食堂、「君主の広間」など、修道院が保有していた豪華な部屋の数々も見ることができます。

これほど贅沢な空間を造ったのは、カトリックの権威を示し、プロテスタントに流れつつあった信者を取り戻そうという意図があったからだといいます。

フュッセン市立博物館にある最も有名な展示品が、アンナ礼拝堂内にある「フュッセンの死の舞踏」。1602年に描かれた作品で、皇帝や司教、農民など、異なる社会階層の人々が、擬人化された「死」とともにダンスを繰り広げる場面が描かれています

「死の舞踏」のモチーフは、一時期ヨーロッパ各地で流行しましたが、「フュッセンの死の舞踏」は、この種の絵画としてはバイエルン州で最も古いものです。「死の舞踏」は、死は誰にでも平等に訪れることを示唆しているとか。

ロマンティック街道の終点を見る

ロマンティック街道の終点として知られるフュッセンですが、聖シュテファン修道院教会の西側には、本当に「ロマンティック街道の終わり」と書かれた終点の地があります

しかも、この門は実際に行き止まりで、なかなか洒落がきいています。

文字の左側に3つの脚のマークのフュッセンの紋章、右側に旗のマークのヴュルツブルクの紋章が描かれ、ロマンティック街道の起点と終点を表しています。

ロマンティック街道の起点、ヴュルツブルクからおよそ350キロ。ロマンティック街道を南下してきた人にとって、ここフュッセンでロマンティック街道の終点を見るのはなかなか感慨深いものです。

シシィ・トルテに舌鼓

フュッセンで食べられる特別なケーキに「シシィ・トルテ(Sissi-Torte)」があります

「シシィ」とは、19世紀にバイエルン王国に生まれ、オーストリア=ハンガリー帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に嫁いだエリーザベトのこと。美貌の皇妃として有名で、当時のヨーロッパ宮廷でナンバーワンの美女ともいわれていました。

このシシィ・トルテは、フュッセンに立ち寄るシシィのために、特別に考案されたケーキで、シシィ本人も実際にこのケーキを食べたといいます。

シシィ・トルテが食べられるのは、大通りに面したホテル「SCHLOSSKRONE」併設の「Kurcafe。テイクアウトができるほか、ホテルのカフェ&レストランでいただくこともできます。

洋酒の香るチョコレート風味のスポンジケーキに、濃厚なチョコレートクリームを挟んだ上品なケーキをぜひお試しあれ。

フュッセンに宿泊して日帰り観光を楽しもう

ノイシュヴァンシュタイン城を訪れる人のなかには、フュッセンには立ち寄らず、ミュンヘンなどから日帰りで城だけを見に行く人も少なくありません。

しかし、フュッセンは素通りしてしまうには惜しい町。フュッセンからノイシュヴァンシュタイン城のふもとの村、ホーエンシュヴァンガウまではバスで約10分、世界遺産のヴィース教会まではバスで約45分です。

できることならフュッセンに宿泊して、フュッセンの町とお城の両方を楽しんではいかがでしょうか。