クリスマスを待ちわびるアドベントの時期、全国津々浦々でクリスマスマーケットが開催されるドイツ。
なかでも「ドイツ3大クリスマスマーケット」のひとつに数えられるのが、ドイツ南西部・シュトゥットガルトのクリスマスマーケットです。
そのすぐ近くに、小都市ながらユニークなクリスマスマーケットを求めて国内外から大勢の人々がやってくる町があるのをご存じでしょうか。
それが、中世のクリスマスマーケットで知られるエスリンゲン。600年前を再現したというクリスマスマーケットには、ほかにはないディープな魅力が満載でした。
Contents
中世の雰囲気をもつ木組みの町・エスリンゲン
ドイツ南西部・シュトゥットガルト近郊に位置する、知る人ぞ知るネッカー河畔の古都が「エスリンゲン(Esslingen am Neckar)」。
大都市シュトゥットガルトからわずか15キロのところにありながら、ドイツ木組みの家街道沿いに位置し、中世の面影を残す美しい町並みに出会えます。
マルクト広場周辺には数多くの木組みの家々が並び、1328年建造のドイツ最古の民家が残っていることでも知られます。
エスリンゲンを象徴する風景が、町の中心部を走るロスネッカー運河の眺め。運河に架かるアグネス橋はエスリンゲンを代表するフォトスポットで、風情ある運河地区は「小ヴェニス」とも呼ばれています。
美しい木組みの町並みに加え、ワインの産地であるエスリンゲンは、ドイツのスパークリングワイン「ゼクト」でも有名。エスリンゲンはゼクト発祥の地で、ドイツ最古のゼクト醸造所「ケスラー」があるのです。
クリスマスマーケットで注目されるエスリンゲンですが、美しい町並みあり、名物のゼクトありのエスリンゲンは、夏に訪れるのもおすすめです。
エスリンゲンのクリスマスマーケット
日ごろはのんびりとした雰囲気のエスリンゲンが突如として賑やかになるのが、クリスマスマーケットの時期。
小さな町にもかかわらず200以上の屋台が並ぶエスリンゲンのクリスマスマーケットはじつに盛大で、「南ドイツで最も美しいクリスマスマーケットのひとつ」ともいわれるほどです。
エスリンゲンのクリスマスマーケットを有名にしているのが、なんといっても中世のクリスマスマーケット(Mittelaltermarkt)。
600年前の中世時代を再現したクリスマスマーケットで、中世風の小屋やテントが出現。RPGに出てきそうな中世風の衣装を身にまとった売り手が、これまた中世風の雑貨や食べ物を販売するという、中世ずくしのマーケットなのです。
エスリンゲンのクリスマスの代名詞ともなっている中世のクリスマスマーケットは、市庁舎広場やハーフェンマルクト周辺で開催。石畳の道に木組みの家々が連なるエスリンゲンの旧市街が、まるごと数百年前にタイムスリップします。
中世のクリスマスマーケットと隣接して、マルクト広場では通常のクリスマスマーケットも開催。エスリンゲンでは、中世のクリスマスマーケットと通常のクリスマスマーケット、一度で両方が楽しめてしまうのです。
2018年のクリスマスマーケット開催情報
【期間】
2018年11月27日(火)~12月21日(金)
【時間】
日曜日~水曜日 11:00~20:30(初日16:30~)
木曜日~土曜日 11:00~21:30
最終日11:00~18:00
公式サイト:https://www.esslingen-marketing.de/en/the-esslingen-medieval-market-and-christmas-market
エスリンゲンへのアクセス
エスリンゲンへのアクセスは、鉄道が便利。シュトゥットガルト中央駅(Stuttgart Hbf)からエスリンゲン(Esslingen am Neckar)までは、ローカル線で10~12分。または、Sバーン(近郊列車)1号線で17分程度です。
列車の本数も比較的多いので、シュトゥットガルトから日帰りで気軽に足を延ばすことができますよ。
エスリンゲンの駅から町の中心部までは、バーンホフ通りをまっすぐ歩いて10分ほど。人の流れに乗ればマルクト広場にたどり着くので、とても簡単です。
エスリンゲンのクリスマスマーケットは、大きく市庁舎広場とハーフェンマルクト、マルクト広場に分かれていますが、それぞれが隣接しているため、特に意識しなくても自然と3つの会場を周ることができます。
タイムスリップ気分!中世のクリスマスマーケット
中世のクリスマスマーケットが開催される市庁舎広場にやってくると、そこはもう数百年も前の中世の世界!
テントを張ったような屋台や木の小屋が建ち並び、紋章が描かれた旗や当時の言葉が書かれた木の看板が中世気分を盛り上げます。「ドイツのクリスマスマーケットはもういくつも周った」という人でも、この独特の景色と雰囲気にはワクワクせずにはいられないでしょう。
市庁舎広場でひときわ目立っているのが、可愛らしいピンク色の市庁舎。その歴史を15世紀にさかのぼる、エスリンゲンを象徴する建物のひとつです。
その市庁舎を取り囲むようにして、中世ムード漂う雑貨や食べ物の屋台がずらりと並ぶ光景は圧巻。一般的なクリスマスマーケット同様、ショッピングやグルメが楽しめるのはもちろんのこと、中世の職人芸や大道芸人によるパフォーマンスも見られます。
その様子は、まさにテーマパークさながら。中世のクリスマスマーケットを目当てに、ドイツ内外から多くの旅行者が訪れるというのもうなずけます。
ひと味違うクリスマス雑貨
クリスマスマーケットといえば、キラキラした色とりどりのクリスマス雑貨が売られているのがお約束。ですが、中世のクリスマスマーケットで出会える雑貨は、ひと味もふた味も違います。
手作りのナイフやスタンプ、革製品、木の食器やおもちゃ、毛皮製品、水牛の角のカップ、フラスコのような容器に入ったリキュールなど、普通のクリスマスマーケットでは出会えない珍しい品々に出会えます。
なかには、RPGの登場人物が来ていそうな衣装も。こんな衣装を買ってさっそく身にまとえば、中世のクリスマスマーケットがさらに楽しめるかもしれませんね。
鍛冶屋やガラス吹き、ほうき作りなどのコーナーでは、作り手による実演もあり、臨場感満点。
手作りのぬくもりが感じられる商品が多く、売り手の衣装も中世風でムード満点なので、さまざまな屋台の商品を眺めて歩くだけでもワクワクします。
中世風の屋台グルメに舌鼓
クリスマスマーケットといえば、屋台グルメも楽しみのひとつ。エスリンゲンの中世のクリスマスマーケットでは、グリューワイン(ホットワイン)や焼きソーセージといった定番グルメはもちろんのこと、ほかではあまり見られないB級グルメも充実しています。
食べ物屋台では、昔ながらの大鍋やパン焼き釜が登場。
ワイルドな肉のグリルや、ハムとチーズを包んた窯焼きパン、肉と野菜の煮込みをパンにはさんだもの、木の棒に焼き付けて直火で焼いたパンなど、作る様子を見ているだけで楽しくなる屋台がたくさん。中世風だけに、素朴なグルメが多いですが、シンプルだからこそ素材のおいしさが引き立ちます。
せっかく中世のクリスマスマーケットにやってきたからには、一般的なクリスマスマーケットではなかなか出会えないB級グルメに挑戦してみたいですね。
中世だけに遊具もアナログ
ドイツのクリスマスマーケットでは、子どものための遊具やゲームが設置されていることが多いですが、中世の世界ゆえ、電動の遊具やゲームは一切ありません。
クリスマスマーケットでよく見かける観覧車も、ここではなんと人力!スタッフが雰囲気を盛り上げながら、手で動かしてくれるのです。電動の観覧車よりむしろ楽しそうではありませんか。
ゲームだって、射的のようなものや輪投げなど、簡単な道具と身体を使って楽しむアナログなものばかり。デジタルに囲まれた生活に慣れていると、こうしたアナログな遊びが新鮮に感じます。
日本人なら、子どもの頃夏祭りで遊んだ思い出がよみがえってくるかもしれません。
エスリンゲンの中世のクリスマスマーケットは、RPGの世界に迷い込んだかのような気分に浸れるというだけでなく、「手作り」「アナログ」のぬくもりや楽しさに触れられる場所でもあるのです。
通常のクリスマスマーケットも魅力的
ユニークな中世のクリスマスマーケットばかりが注目されがちなエスリンゲンですが、マルクト広場で開催される通常のクリスマスマーケットも魅力的。
小規模でありながら、木やガラスでできたクリスマスオーナメントや、手作りのアクセサリー、フェルト製品、パッケージもおしゃれなコンフィチュールやお菓子など、ハイセンスな品々を扱う屋台が並んでいて、欲しくなってしまうものが見つかるでしょう。
食べ物屋台では、おなじみのソーセージのほか、餃子に似た食べ物で南ドイツ名物の「マウルタッシェン」をはじめとするローカルグルメも登場。
中世のクリスマスマーケットで中世風の屋台グルメを楽しんだら、通常のクリスマスマーケットではこの地域の名物料理にトライするというのもいいですね。
近郊のシュトゥットガルトは超有名クリスマスマーケットだけに、大規模で国際的、屋台もプロフェッショナルな飾りつけがされていますが、エスリンゲンのクリスマスマーケットでは、いかにも手作りといった素朴な飾りつけが見られます。気取らないアットホームな雰囲気なので、マイペースに心地良く過ごせるはずです。
おわりに
エスリンゲンとシュトゥットガルト。簡単に行き来ができる近さながら、この2つの都市は街の風景も、クリスマスマーケットの雰囲気もまるで違います。
ドイツ3大クリスマスマーケットのひとつに数えられ、「世界最大級のクリスマスマーケット」ともいわれるシュトゥットガルトのクリスマスマーケットは、大規模で国際的。街自体も大きく近代的な印象です。
一方のエスリンゲンは、古きよき時代の雰囲気を残す中世の町。ご紹介した通り、クリスマスマーケットは実に個性的で小都市ならではのぬくもりがあります。
対照的にも思えるエスリンゲンとシュトゥットガルトのクリスマスマーケットですが、どちらにもそれぞれ固有の魅力があります。むしろ、まったく違うタイプのクリスマスマーケットを訪ねることで、それぞれの良さが際立つはず。
南西ドイツを旅するなら、エスリンゲンとシュトゥットガルトのクリスマスマーケットをはしごして、ドイツのクリスマスマーケットの多彩な魅力に触れてみてください。