世界最大級のアドベントカレンダーが出現するゲンゲンバッハ ~ドイツ・黒い森の珠玉の町~

ドイツ南西部の黒い森地方に位置する穴場的存在の町が、ゲンゲンバッハ。華やかな木組みの家々が残る町並みは、「ロマンティックな宝石のような町」と称えられます。

美しい中世の町ながら観光地化されすぎておらず、人々の生活が垣間見える素朴な表情が魅力。クリスマス前に登場する「世界最大級のアドベントカレンダー」も見逃せません。

黒い森地方の木組みの町、ゲンゲンバッハ

ドイツ南西部、バーデン=ヴュルテンベルク州に広がる黒い森。この地方には、まだまだ日本では知られていない、隠れた宝石のような町がたくさん眠っています。

そのひとつが、バーデンワイン街道沿いの町であり、ドイツ木組みの家街道沿いの町でもある、ゲンゲンバッハ。地方都市らしく静かで落ち着いたたたずまいながら、立派な木組みの建物が数多く残る町並みは、中世の面影を色濃く残しています。

色鮮やかな木組みの家々に、情緒あふれる石畳の小路が織り成す美しい風景に出会えるゲンゲンバッハは、「ロマンチックな宝石のような町」や「バーデン地方のニース」など称されるほど

ゲンゲンバッハへのアクセス

ゲンゲンバッハに近い主要都市が、フランスとスイスとの国境に近いフライブルク。フライブルク中央駅からゲンゲンバッハ駅までは、オッフェンブルク乗り換えで鉄道で約一時間。

温泉保養地として名高いバーデン・バーデンからのアクセスも良く、鉄道で35分~40分程度。バーデン・バーデンからは乗り換えなしで行ける列車もあります。

バーデン=ヴュルテンベルク州の州都、シュトゥットガルトからは、鉄道で2~2時間半程度。シュトゥットガルトからの日帰りも可能ですが、せっかく黒い森地方を訪れるなら、ローカル線を乗り継いで、小さな町々をゆっくりと訪ね歩くのがおすすめです。

宝石のような珠玉の町並み

ゲンゲンバッハの町の中心が、青空市場が開かれるマルクト広場。その中央には「レールの泉」があり、町の英雄シュヴェートの像が堂々と立っています

左手には町の紋章が描かれた盾を、右手には帝国都市特権状をもつシュヴェート像は、神聖ローマ帝国から帝国自由都市の地位を得たゲンゲンバッハの誇りを表しています。

マルクト広場の前を走るハウプト通りは、ゲンゲンバッハのメインストリート。南ドイツらしいパステルカラーの建物や、メルヘンチックな木組みの家々が連なる光景を眺めながら歩くだけでもワクワクするはず。

これらの建物は、本屋、銀行、肉屋など町の人々の生活に欠かせない店舗などとして使われています。こうして歴史が日常に溶け込んでいるのが、ドイツの旧市街のいいところですね。

マルクト広場からハウプト通りを南に下ると見えてくるのが、キンツィヒ門塔。町の防衛に重要な役割を果たしていた門で、かつては24時間体制の警備が敷かれていました。ゲンゲンバッハを流れるキンツィヒ川の河川交通の監視や、来訪者からの税金の徴収なども担っていたといいます。

現在内部は博物館として使用されており、塔の上からはゲンゲンバッハの風情ある町並みが見渡せます。

時が止まったかのような路地裏

ゲンゲンバッハの町歩きには、路地裏散策も欠かせません。にぎやかなメインストリードを外れて石畳の細い路地に入り込むと、時が止まってしまったかのような静寂の別世界が広がっています

なかでも「エンゲルガッセ」と呼ばれる通りには、長屋風の木組み家屋が寄り添うように建ち並び、情緒満点。これらの建物は現役の住居であり、生活の場ならではの素朴な温かみに心癒されます。歴史ある建物を当時のままに美しく保存して暮らしている人々の努力は、「見事」というほかありません。

エンゲルガッセを歩くときには、家々の下部に出入り口のようなものがあるのにご注目。道路がかさ上げされているため、かつての一階が現在は半地下室として使われているのです。

木組みの建物の地下室だなんて、なんだか秘密の部屋みたいでワクワクしませんか?

世界最大級のアドベントカレンダー

ゲンゲンバッハを有名にしているのが、アドベントの期間にお目見えする「世界最大級のアドベントカレンダー」

「アドベント」とは、イエス・キリストの降誕を待ち望む期間のことで、クリスマス前の約4週間にあたります。そして「アドベントカレンダー」は、アドベントの期間中、クリスマスまでの日数をカウントダウンするためのカレンダーのこと

アドベントカレンダーにはさまざまなデザインがありますが、たいていは12月1日~24日を示す24の窓があり、12月になると毎日ひとつずつ窓を開いていくのが主流。

ゲンゲンバッハでは、市庁舎の24の窓を使って市庁舎全体をアドベントカレンダーに見立てているのです

美しい建物と有名アーティストの競演

1784年に建築家ヴィクトール・クレッツによって建てられたこの市庁舎は、ゲンゲンバッハで最も美しい建物のひとつとして有名

ロココ様式と初期古典様式の特徴を兼ね備えた優美なファサードをもつ建物で、切り妻屋根の上の三体の像は、正義の神と知恵の神、裕福な貴族を表しています。

ただでさえ美しい市庁舎がドレスアップし、ひときわ華やかな姿を見せてくれるのが、アドベントの時期なのです。

「世界最大級のアドベントカレンダー」が出現するのは、11月30日。以降、毎日18時に市庁舎の窓がひとつずつ開き、12月23日に24枚すべての絵が出そろいます

アドベントカレンダーに使われる絵柄は年ごとに変わり、過去にはマルク・シャガールの作品や、「長靴下のピッピ」の挿絵も登場しました。

2018年は、ポップアートの旗手として知られるアンディ・ウォーホルの作品が楽しめます。クラシカルな市庁舎とポップアート。この組合せがまた粋ですね。

市庁舎のエントランス前にはステージが設けられ、アルプホルンの演奏や子どもたちの合唱などのパフォーマンスも行われます。

アットホームなクリスマスマーケット

ドイツには、ドレスデン、ニュルンベルク、シュトゥットガルトなど、世界的にも有名なクリスマスマーケットがたくさんあります。

有名どころや大都市のクリスマスマーケットもいいですが、ゲンゲンバッハのように小さな町のアットホームなクリスマスマーケットもローカルな魅力にあふれています

クリスマスのイルミネーションに彩られた木組みの町並みは、ひときわロマンティック。通りには、幻想的なキャンドルや、カラフルなオーナメント、チーズ、ソーセージ、ワインなど、さまざまなものを売る屋台が並んでいます。

オーナメントひとつとっても、黒い森地方に特徴的な木の断面を使ったものなど、この地方の特色が感じられるアイテムが見つかりますよ。

食べ物屋台では、ピザに似たフラムクーヘンやパスタのようなシュペッツレなど、南ドイツの名物グルメがそろい踏み

バーデンワイン街道沿いの町だけあって、クリスマスマーケットで定番のグリューワイン(ホットワイン)に加え、通常のワインも販売されているので、ワインとともにローカルグルメを楽しみましょう。

ゲンゲンバッハのクリスマスマーケットを訪れる人の多くが、地元の人や近郊からやってきた人々。オレンジ色のあたたかな光に包まれて、小さな町のクリスマスマーケットならではの穏やかで優しい時間が流れています。

【2018年のクリスマスマーケット情報】
開催期間:11月30日~12月23日
開催時間:月~金 14:00 ~20:00、土日 12:00 ~ 20:00

おわりに

色とりどりの花々に彩られる春~夏も、クリスマスマーケットで盛り上がりを見せる冬も、それぞれに異なる美しさを見せてくれるゲンゲンバッハ。

黒い森地方の小さな町で、まだ見ぬドイツの魅力を見つけてみませんか。