ロマンティック街道の秘宝・ディンケルスビュールは、美しき中世の城塞都市

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ロマンティック街道の中世の町といえば、ローテンブルクが有名ですが、ローテンブルクにも負けないくらいに美しい町並みを残す中世都市があります。

それが、かつて帝国自由都市として栄えたディンケルスビュール。幸いにもほとんど戦災を受けなかったため、城壁に囲まれたカラフルな町並みは、中世の面影をそのまま残しているのです。

子ども祭りあり、夜警ツアーありの、知られざる魅力をもつディンケルスビュールを旅してみましょう。

ロマンティック街道の中世都市ディンケルスビュール

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ディンケルスビュールは、南ドイツ・バイエルン州のロマンティック街道沿いに位置する町。古くから手工業や交易で栄え、13世紀には帝国自由都市の地位を与えられました

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外敵の侵入に備え、15世紀までに築かれた城壁が残る城塞都市で、三十年戦争や第二次世界大戦など幾多の戦いを経ながらもほとんど戦災を受けなかったために、今も中世そのままの美しい景観が保存されています

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町のキャッチフレーズは、「川と草地のロマンティック」。城壁で囲まれた旧市街の外には草地や公園が広がり、ヴェルニッツ川が流れる穏やかな自然に囲まれたディンケルスビュールは、歩いているだけで心安らぐ場所なのです。

ディンケルスビュールへのアクセス

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ディンケルスビュールには旅客列車が運行していないため、アクセスはバスまたはレンタカーとなります。夏季ならロマンティック街道の主要観光スポットを結ぶ「ロマンチック街道バス」の利用が便利。ローテンブルクからの所要時間は約50分です。

ロマンティック街道バスが運行していない時期は、ローテンブルク駅前(Bahnhof, Rothenburg ob der Tauber)から807番のバスに乗り、Frankenstr., Dombühlで乗り換えて、ディンケルスビュール(Am Stauferwall, Dinkelsbühl)下車。乗り換えの待ち時間も含め、所要約1時間半です。バスのスケジュールはドイツ鉄道(DB)のホームページで検索できます。

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アクセスが少々不便なディンケルスビュールですが、そのかわりにローテンブルクに比べるとずっと静かで、観光地化されすぎていない素朴な雰囲気があります。ローテンブルクとディンケルスビュールの両方を訪れた人のなかには、「ディンケルスビュールのほうが好きだ」という人もおり、わざわざ足を運ぶ価値は必ずあります。

城壁に囲まれたカラフルな町並み

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ディンケルスビュールの旧市街へのメインエントランスが、鮮やかなオレンジ色の塔が目を引く、ヴェルニッツ門。その先には、南ドイツらしい色とりどりの建物が並ぶ、カラフルな中世の世界が待っています。

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旧市街の中心をなすマルクト広場周辺には、黄色にオレンジ、赤、緑と、鮮やかな色彩の三角屋根の建物がずらり。思わず歓声を上げてしまうほど可愛らしい町並みです。

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なかでも目を引くのが、精緻な装飾が施された「ドイチェ・ハウス」。1440年ごろに建てられた木組みの館で、老舗ホテル兼レストランとして利用されています。数ある木組みの建物のなかでも、これほどまでに細工が優美なものは珍しく、いつまでも眺めていたくなるほど。

重厚な聖ゲオルク教会

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ディンケルスビュールのランドマークが、マルクト広場に面して堂々と建つ聖ゲオルク教会。教会建築の名手であるニコラウス・エーゼラーによって1499年に建てられた教会で、ホール型教会としては、南ドイツで最も美しいといわれています

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歴史を感じさせるどっしりとした外観もさることながら、内部のホールの高さや、幾重にもアーチが重なる曲線美は圧巻。後期ロマネスク様式の塔の上は展望台になっていて、222段の階段をのぼると、オレンジ屋根が連なるディンケルスビュールの町並みが一望できます。

心を打つ多彩な表情

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華やかな風景が広がる旧市街の中心部だけでなく、ひっそりとした小路も印象的。なんだかほっとさせられるような古い井戸や、タイムスリップしたかのような城壁の周辺など、ディンケルスビュールには、いたるところに絵になる風景があります

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小さいながらも多彩な表情を見せてくれるディンケルスビュールの町は、すべての通りを歩きつくしたくなるほどに魅力的です。

子どもたちが町を救った!?

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ディンケルスビュールは、毎年7月中旬に開催される子どもたちが主役のお祭り「キンダーツェッヘ(子どもたちへのもてなし)」で有名。普段は静かなディンケルスビュールも、この時期ばかりは愛らしい子どもたちのパレードを見ようと集まる人々で大いに盛り上がります。

子ども祭り「キンダーツェッヘ」は、その昔、子どもたちがディンケルスビュールの町を救ったという逸話にちなんでいます。三十年戦争下の17世紀、ディンケルスビュールは敵のスウェーデン軍に包囲され、破壊寸前というところまで追い込まれていました。

そんな折、子どもたちがスウェーデンの将軍に慈悲を乞い、そこにわが子の面影を見た将軍は、町の破壊と略奪を思いとどまったのです。そのときに、町の人々が勇気ある子どもたちを食事やご褒美でもてなしたことが、現在の「キンダーツェッヘ」へとつながっています。

ディンケルスビュール名物・夜警ツアー

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もうひとつのディンケルスビュール名物が、夜限定の夜警ツアー。4~10月の毎日、3~11月は金・土の21時に、角笛とカンテラを持った夜警が聖ゲオルク教会前に現れます。中世の時代には町を守っていた夜警ですが、現在では観光客とともにネルトリンゲンの町を周るガイド役を務めているのです。

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ほかにも夜警ツアーを開催している町もありますが、ディンケルスビュールの夜警ツアーはかなり独特。旧跡を周ってディンケルスビュールの歴史や逸話を教えてくれるだけでなく、主要なレストランや居酒屋を周り、ビールやワインなどを振る舞ってくれるのです。各スポットで提供されたお酒は、参加者みんなで回し飲み。日本ではなかなかできないローカル体験です。

夜のとばりが下りた中世の町に響く、角笛の音と夜警の歌声は、心に染みる音色。夜警ツアーに参加するためにも、ディンケルスビュールではぜひ宿泊をおすすめします。

おわりに

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日本ではあまり注目されることがありませんが、ディンケルスビュールは数時間程度では味わいつくせない深い魅力をもつ町。できることならゆっくりと滞在して、中世の町の趣をじっくりと感じてみてください。