北ドイツのリューベックは、「バルト海の女王」と呼ばれた世界遺産の古都。レンガ造りの重厚な町並みは、ハンザ同盟の盟主として栄えた時代の栄華を今に伝えています。
ハンブルクからの日帰りもでき、気軽に観光できるコンパクトな町ながら、見どころはたくさん。華やかさと貫禄を兼ね備えた「女王」に会いに出かけましょう。
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「バルト海の女王」リューベック
北ドイツ、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州の古都リューベック。13~14世紀、ハンザ同盟が最も栄えた時代に盟主として栄華をきわめ、その美しい街並みは「バルト海の女王」「ハンザの女王」とうたわれていたほど。
かつてはリューベックがバルト海や北海で荷揚げされた海産物の取引所だったことに加え、リューネブルクからロシアや北欧へと至る「塩の道」の通過点でもあり、各地から商人が集まり活況を呈していました。
トラヴェ川とトラヴェ運河に挟まれた川中島にある旧市街は、まるごと世界遺産。北ドイツらしいレンガ造りの重厚感漂う街並みは、「女王」の名にふさわしい華やかさと貫禄に満ちています。
※ハンザ同盟:中世後期に北海やバルト海のドイツ諸都市が結成した都市同盟で、ヨーロッパ北部の経済圏を支配した。
リューベックへのアクセス
リューベックへの旅の起点には、北ドイツ最大の都市ハンブルクが便利。ハンブルク中央駅からリューベック中央駅までは、鉄道(RE)で約45分。ハンブルクからの日帰り旅行もじゅうぶん可能です。
ベルリンからは、ECとREを乗り継いで、所要約2時間45分~(Büchen乗り換え)。
ホルステン門
リューベックのシンボルといえば、なんといっても旧市街の入口に位置するホルステン門。1464~1478年にかけて町の防衛のために建造された石組みの門で、旧50マルク紙幣にもデザインされていた、ドイツで最も有名な門のひとつです。
堅固な壁の厚みは、最も厚い部分で3.5メートルにもおよび、その重みで地面にめり込み、傾いてしまっているのがわかります。
入口の上に書かれた金色のラテン語の文字は、「内(リューベック)は団結、外には平和を」という意味。現在内部は市の歴史博物館となっており、昔のリューベックの模型や、帆船模型、中世の武具などが展示されています。
市庁舎
ハンザ同盟の盟主として隆盛を誇ったリューベックの富と権力の象徴が、マルクト広場に面して建つ市庁舎。1226年に着工され、16世紀にはルネッサンス様式で増改築がなされたため、さまざまな建築様式が混じり合ったユニークな姿をしています。
ゴシック様式の部分は、リューベック特有の黒レンガ造りで、重厚感満点。風を通すための大きな丸穴がついた外壁や緑色のとがった塔も特徴的で、複雑かつ優美なシルエットは見ていて飽きることがありません。
ガイドツアーに参加すれば、内部も見学可能。ゴシック様式の議会ホールや、ロココ様式の謁見の間など、宮殿のように豪華な部屋の数々は必見です。
市庁舎のガイドツアーは月~金の11時、12時、15時、土曜日の13時半にスタート。ドイツ語のみなので、事前に市庁舎の受付で英語ガイドブックを購入するか、可能であればレンタルしておくといいでしょう。
マリエン教会
市庁舎のそばに堂々とたたずむ巨大な教会が、1250年から1350年にかけて建てられたマリエン教会。ドイツ全土でも3番目に大きな教会で、レンガ造りのゴシック様式の教会としては世界最高の高さを誇ります。マリエン教会の建設後、バルト海沿岸ではこれをモデルとした教会が数多く建てられました。
内部は高い天井をいかした荘厳な空間で、8512本ものパイプをもつ、世界最大級のパイプオルガンも有名。マリエン教会は音楽家バッハゆかりの地としても知られ、かつてこの教会のオルガニストを務めていたブクステフーデが奏でる音色に感激して、バッハが通いつめたという逸話が残っています。
第二次世界大戦下、1941年にイギリスの空襲で破壊され、戦後復元されましたが、戦災で地面にめり込んだままの鐘は、平和を願うモニュメントとしてそのまま残されています。
聖ペトリ教会
リューベックの旧市街を一望するなら、聖ペトリ教会の塔にのぼってみましょう。聖ペトリ教会は、13世紀末から14世紀なかばにかけて建造されたゴシック様式の教会。
教会としての見どころはほとんどありませんが、エレベーターで塔の上にのぼることができ、展望台からは、ホルスタイン門やマリエン教会といったリューベックのランドマークを見下ろすことができます。リューベックの町歩きを始める際、まずは聖ペトリ教会の塔にのぼって、位置関係を把握しておくのもいいですね。
ブッデンブロークハウス(マン兄弟記念館)
リューベックは、3人のノーベル賞受賞者を輩出した町。1929年にノーベル文学賞を受賞したトーマス・マンもそのひとり。彼の代表作「ブッデンブローク家の人々」の舞台になったブッデンブロークハウスは、マン家の人々ゆかりの品を展示する博物館となっています。
よく混同されますが、ブッデンブロークハウスは、トーマス・マンの祖父母が住んでいた家で、彼の生家はBreite通り38番地にあります。
聖霊養老院
ヨーロッパで最も古い救済院のひとつとして知られるのが、教会のような外観をもつ聖霊養老院。リューベックがハンザ都市として栄えた中世の時代、ハンザ商人を中心とする裕福な市民たちは、貧しい人を助けるための福祉施設を造りました。
この聖霊養老院は、13世紀に病院としてスタート。のちに救済院としての機能が加わり、リューベックや近隣の病人や貧者たちが収容されていました。
奥には170の小部屋があり、寝るスペースがあるだけの質素なものでしたが、個室をあてがわれ、食事が出されたのは、病気の人や貧しい人々にとっては大きな助けになったことでしょう。
建物の一部は現在も老人ホームや介護施設として使われており、扉を開けてすぐの大ホールでは、美しいゴシック様式のアーチやステンドグラス、祭壇などが見学できます。
リューベック名物マジパン
リューベックの名物が、アーモンドの粉で作った砂糖菓子「マジパン」。日本では「ケーキの飾り」程度の認識ですが、ドイツでは、飾りにするだけでなく、ケーキに入れたり、チョコレートの詰め物にしたり、そのまま食べたりと、マジパンの存在感が日本の比ではありません。
マジパン好きが多いドイツでも、一目置かれているのがリューベックのマジパンで、なかでも「ニーダーエッガー」は、マジパンの名店として有名。
市庁舎前のニーダーエッガー本店は、1階がショップ、2階がカフェ、3階がマジパン博物館となっているマジパンづくしのお店。ショップでは、動物や果物の形をしたマジパンや、マジパン入りのチョコレートなど、あらゆるマジパン製品を買うことができ、2階のカフェではフレッシュなマジパンを使ったケーキがいただけます。
「ボソボソした独特の食感がちょっと…」と、マジパンに苦手意識を抱いている人は、だまされたと思って2階のケーキで「ヌストルテ(Nusstorte)」を食べてみてください。ニーダーエッガーの新鮮なマジパンはしっとりとした上品な味わいで、きっとマジパンの概念が変わるはずです。
「ニーダーエッガー(Niederegger)」
住所:Breite Str. 89 23552 Lübeck
公式サイト:https://www.niederegger.de/
おわりに
コンパクトな旧市街に数多くの見どころがつまったリューベックの町は、「さすがはハンザ同盟の盟主」と思わせてくれる貫禄を備えています。
北ドイツの港町ならではの、独特の風景と雰囲気を楽しんでください。