水に浮かぶ優雅な狩猟の館、モーリッツブルク城 ~ドレスデンから日帰り旅~

東ドイツきっての人気観光都市、古都ドレスデン。

ドレスデンからの日帰り観光スポットとして人気を集めているのが、かつて狩猟の館として使われていたモーリッツブルク城です。

水上に浮かんでいるかのように見える美しい姿はもちろんのこと、赤鹿の角が飾られた食堂をはじめ、城内のユニークな部屋の数々も魅力。

ドレスデンからちょっと足を延ばして、美しきバロックの城に会いにいきましょう。

狩猟の館・モーリッツブルク城

ドレスデンからおよそ15キロ。野生の鹿やイノシシも生息する自然保護区の中にたたずむ城館が、モーリッツブルク城です。

この城は、もともと1546年にザクセン公モーリッツにより狩猟の館として建てられたもので、当初はルネッサンス様式の建物でした

その後、歴代のザクセン王や選帝侯によって増改築が行われ、1723年から1733年にかけては、アウグスト強王によってバロック様式の狩猟館兼離宮として改築されます。クリーム色と白の組み合わせは、ザクセン地方のバロック建築の特徴。

アウグスト強王(選帝侯フリートリッヒ・アウグスト1世)は、ドレスデンのツヴィンガー宮殿をはじめ、ドレスデンとその周辺に数々のバロック建築を建て、ドレスデンを文化と芸術の都に仕立て上げた人物です。

モーリッツブルク城の改築にあたっては、アウグスト強王自らが設計図を描くほどの力の入れようだったとか。最終的には、ツヴィンガー宮殿も手がけた宮廷建築家のペッペルマンやルンゲローネといった、当時の名工の手によって完成しました。

水上に浮かんでいるかのような幻想的な姿

モーリッツブルク城といえば、水上に浮かんでいるかのような幻想的な姿が印象的。モーリッツブルク城はその周囲を大小30もの池や庭園に囲まれており、城を囲む池は、1730年に城の周囲を掘り下げて造られた人口池です

外観の美しさにもこだわったモーリッツブルク城は、城そのものだけでなく、島となっている土地やそこにある城以外の建物までもが左右対称になるように造られています。

城と池が織り成す美しい風景を堪能するなら、モーリッツブルク城の対岸に渡って、池を囲む道路から城を眺めるのが一番

とりわけ天気の良い日には、水面に城が映り、何度でもシャッターを切りたくなるような絵のような光景を見せてくれます。

周辺ではサイクリングを楽しむ人も多く、豊かな自然に恵まれのんびりとした雰囲気もまた、モーリッツブルク城の魅力です。

城内のハイライトは食堂と羽の部屋

現在、モーリッツブルク城の内部はバロック博物館として一般に公開されています。

城内の最大の見どころともいえるのが、コンサートホールなどとしても使用されていた食堂。ここには65もの赤鹿の角が飾られており、なかでも「24本の枝のある角」と呼ばれているものは、赤鹿の角としては世界最大といわれています

すらりと壁に並ぶ赤鹿の顔を見てみると、舌を出しているものもあるなど、一体一体異なる個性が感じられるような気が・・・

中央のテーブルにセッティングされているのは、18世紀のマイセン磁器。白磁に並々ならぬ情熱を注いでいたアウグスト強王の優雅な暮らしぶりが垣間見えます。

かつては、招待客が1000人にもおよぶ大規模なパーティーが開催されることもあり、王たちは、仕留めた獲物とワインに舌鼓を打ちながら、戸外で打ち上げられる花火を楽しんでいたとか。

小さな空間ながら、アウグスト強王の「羽の部屋」も圧巻。室内には、クジャクやホロホロ鳥、アヒルなど、何万羽もの鳥の羽で作られたタペストリーが飾られています

一見普通のタペストリーや天蓋に見える装飾品ですが、これらがすべて鳥の羽でできているなんて・・・王の装飾品に対する尋常ではないこだわりぶりが感じられます。

※通常、城内の写真撮影は禁止されています。

モーリッツブルク城へのアクセス

モーリッツブルク城へのアクセスは、ドレスデンノイシュタット駅前からバス326または457番で約25分。バスはモーリッツブルク城入口のすぐ手前に停車します。

特に週末や祝日はバスの本数が少なくなるので要注意。事前にDB(ドイツ鉄道)のホームページなどで運行スケジュールを調べておくといいでしょう。

レトロなSLに乗ってみよう

ドレスデンからの日帰り観光なら、バスを利用するのが最も手軽な方法ですが、せっかくならレトロな蒸気機関車「レスニッツグルント鉄道」に乗ってみるのもおすすめ。1884年に開通した全長16.55キロの狭軌鉄道で、昔ながらのレトロな姿は鉄道マニアにも大人気だとか。

ただしSLは本数が少ないので、行きか帰りのどちらかはバスを利用し、片道のみSLを利用するといいでしょう。

レスニッツグルント鉄道の運行区間は、ラーデボイル・オスト~ラーデブルク間。

SLを利用する場合のモーリッツブルク城へのアクセスは、ドレスデン中央駅やドレスデンノイシュタット駅からSバーン(近郊列車)でラーデボイル・オスト駅下車(所要8~15分)。

そこからSLのレスニッツグルント鉄道に乗り換え、ラーデボイル・オスト駅からモーリッツブルク駅までおよそ30分。モーリッツブルク駅からモーリッツブルク城までは、徒歩約20分です。

ノスタルジックな蒸気機関車に乗って、森の中をガタゴト揺られる体験は、鉄道ファンならずとも特別なひとときになること間違いありません。

おわりに

城そのものはもちろんのこと、SLに乗れば行き帰りの道のりもアトラクション気分で楽しめるモーリッツブルク城は、ドレスデン市民のあいだでも週末の行楽スポットとして人気。

ドレスデンとはまた違ったのどかなたたずまいに、きっと癒されることでしょう。

取材協力:ドイツ観光局
Special thanks to Dresden Marketing Board