ドイツの飲み物といえば、ビールを思い浮かべるかもしれません。
確かにドイツは世界有数のビール大国です。けれども、ビールと同じくらい、あるいはそれ以上にドイツ人に親しまれている飲み物が「アプフェルショーレ(Apfelschorle)」。
この「アプフェルショーレ」、日本人にはあまりなじみのない、ドイツならではの炭酸文化を反映した飲み物。
最初は違和感を覚えるかもしれませんが、繰り返し飲むうちにハマってしまうこと請け合いです。
ドイツの国民的ドリンク「アプフェルショーレ」って?
ドイツの国民的ドリンクとして真っ先に挙がるもののひとつが、「アプフェルショーレ(Apfelschorle)」。
どのくらいメジャーかというと、レストランで食事をする際、アルコールを注文しない人の大多数が注文するのが「アプフェルショーレ」であり、パーティーなど、人が集まるなんらかのイベントで必ず用意されているのが「アプフェルショーレ」です。
では、「アプフェルショーレ」とはなにかというと、早い話がリンゴジュースの炭酸割です。ドイツには、フルーツジュースやワイン(特に白)を炭酸水で割って飲む習慣があり、「Schorle(ショーレ)」とは炭酸割のこと。
ジュース(Saft)の炭酸割は「ザフトショーレ(Saftschorle)」、ワイン(Wein)の炭酸割は「Weinschorle(ヴァインショーレ)」と呼ばれます。
アプフェルショーレはザフトショーレの一種なのですが、その存在感は別格。
他のザフトショーレであれば「Traubensaftschorle(ブドウジュースのショーレ)」などと呼ばれる一方、リンゴジュースのショーレの場合は「ザフト」を省略して単に「アプフェルショーレ」と呼ばれることが多いことからも、アプフェルショーレが「ショーレのなかのショーレ」であることがわかるでしょう。
アプフェルショーレっておいしいの?
「リンゴジュースの炭酸割」と聞いて違和感を覚えた人もいるかもしれません。
日本にはフルーツの風味をつけた炭酸ドリンクはありますが、フルーツジュースを炭酸水で割って飲むという習慣はありませんよね。
「ジュースを炭酸水で割ったら味が薄くなるんじゃないの?」・・・その疑問、正解です。
自分でアプフェルショーレを作る場合、リンゴジュースと炭酸水の比率には個人差がありますが、だいたいリンゴジュースと炭酸水を半々にするのが一般的。つまり、アプフェルショーレにすると、リンゴジュースの濃さが半分程度に薄まってしまうというわけです。
そのため、こうした飲み方に慣れていない日本人が初めてショーレを飲むと、「味が薄くてなんだかぼんやりしている」という微妙な感想を抱くケースが多数。
ところが、慣れるにしたがってそのままリンゴジュースを飲むよりも甘さ控えめ、さらに炭酸の爽快感もプラスされたアプフェルショーレにハマっていく人が少なくありません。
「アプフェルショーレはなかなかに中毒性のある飲み物」といえるかもしれません。
ほかにも、オレンジジュース、ブドウジュース、パッションフルーツジュース、ルバーブジュースなど、炭酸水と混ぜてショーレになりうるジュースの種類はたくさんありますが、どんな料理にも合いやすいのが甘さやクセの少ないアプフェルショーレ。
それに加え、ドイツがリンゴの国で、ドイツ人が最も好む果物がリンゴであることが、アプフェルショーレの人気を不動のものにしているのでしょう。
どこでも手に入るアプフェルショーレ
ドイツの多くの家庭には、リンゴジュースと炭酸水が常備してあって、家では自分でジュースと炭酸水を混ぜてアプフェルショーレを作るという人も多いです。この場合、自分の好みやそのときの気分に合わせて比率を調整できるので合理的ですね。
その一方、自分で混ぜるのが面倒という人や、外でもアプフェルショーレを飲みたいという人のために、最初からリンゴジュースと炭酸水がブレンドされたペットボトルや瓶入りのアプフェルショーレも販売されています。
日本人の感覚からすれば、フルーツジュースと水を混ぜたドリンクを売っているなんてちょっと不思議ですが、ドイツでは当たり前。
ドイツのスーパーに行けば、リンゴのみならず、さまざまなジュースを使ったショーレが並んでいます。
さらには、カフェやレストランのメニューにも必ずアプフェルショーレが。ルバーブジュースショーレや洋梨ジュースショーレなど、ちょっとマイナーなショーレはお店によってあったりなかったりということがありますが、ドイツの飲食店でアプフェルショーレがメニューにないというお店はほとんどないはずです。
「メニューを見るまでもなく必ずあるとわかっている」という気安さが、アップルショーレ人気に拍車をかけているといってもいいでしょう。
甘くない冷たいドリンクが少ないドイツ
ドイツでアプフェルショーレのようなフルーツジュースの炭酸割という文化が発達した背景として、ドイツには甘くなく冷たいドリンクが少ないという事情が考えられます。
日本では水以外にも冷たい緑茶や冷たい麦茶、アイスティー、アイスコーヒーといった飲み物の選択肢がありますが、ドイツでは冷たいドリンクといえば、基本的には水かアルコールかフルーツジュース。
ドイツの「アイスカフェー(Eiskaffee)」は、アイスクリームや生クリームがトッピングされたコーヒーのことですし、紅茶専門店以外のレストランやカフェのメニューにアイスティーがあったとしても、それはおそらくあらかじめ砂糖が入ったペットボトルのアイスティーです。
こんな事情から、水やアルコール以外で、「甘さ控えめのすっきりした飲み物を飲みたい」と思ったとき、「ジュースに炭酸水を混ぜればいいじゃないか」となったのかもしれません。
日本人は少々驚くことの多いドイツの「ショーレ」文化ですが、慣れてくるとその良さがわかってくる可能性大。
ザフトショーレは「水ではなくちょっと味のあるものを飲みたいけれど、甘さは控えめにしたい」というときにうってつけ。ドイツに行ったら、アルコールだけでなくさまざまなショーレにもトライしてみてはいかがでしょうか。