家族やパートナー、友人の誕生日を祝うとき、誕生日当日が無理な場合はどうしますか? 誕生日の前日、誕生日前の週末など、「前祝い」の形をとることが多いのではないでしょうか。
日本では、「過ぎてしまってからお祝いするよりも、先取りしてしまったほうがいい」という風潮がありますが、日本の常識はドイツの「非常識」。ドイツでは、誕生日の前祝いはタブーとされているのです。
誕生日の前祝いがタブーのドイツ
ドイツでは、誕生日よりも前にパーティーを開く、誕生日よりも前に「おめでとう」の言葉をかけるといった「前祝い」はNG。誕生日当日にお祝いできない場合は、誕生日が過ぎてから祝うのが慣例となっています。前祝いを良しとする日本とは正反対ですね。
では、なぜドイツでは誕生日の前祝いはタブーなのでしょうか。それは、「誕生日前にお祝いの言葉をもらうと早死にする」、「誕生日前にお祝いをすると魔がさして不幸になる」といった迷信があり、誕生日の前祝いは縁起が悪いとされているから。
手書きのメッセージを大切にするドイツでは、今も誕生日のメッセージカードを贈り合う習慣がありますが、お祝いのメッセージカードが誕生日より前に届いても、当日まで開封しないという人もいます。
ドイツ人の知人や友人がいる場合には、うっかり誕生日祝いをフライイングしてしまわないよう、注意が必要ですね。
誕生日を迎える本人がパーティーを主催
ドイツの誕生日にまつわる習慣には、ほかにも日本ではありえないようなユニークなものがあります。そのひとつが、誕生日を迎える本人がパーティーを主催すること。
日本では、誕生日を迎える本人の家族や友人など、周囲の人々がパーティーを企画することがほとんどで、本人がパーティーを主催することはほぼありません。けれども、ドイツでは誕生日を迎える人がパーティーを主催し、その費用も本人が全額負担することがよくあります。(会費制をとる場合もあります)
20歳、30歳、40歳、50歳など、10年に一度の誕生日は特に重視する傾向があり、大人になっても自宅やレストランに大勢の親戚や友人を招き、盛大に祝う人がたくさんいます。招待状の発送や料理の準備、飾りつけなどの準備は大変ですが、それだけ人とのかかわりを大切にしているということですね。
誕生日を迎える本人がケーキを振る舞う
誕生日パーティーを開催するかどうかは本人の自由なので、まったく開かない人もいれば、10年に一度だけ開くという人もいます。
しかし、誕生日パーティーを開催しない人にもつきまとうのが、ケーキを振る舞うという習慣。ドイツでは、自分の誕生日に職場や学校にケーキを持参し、周囲の人に配るという文化があるのです。これには、普段お世話になっている人に「福を分ける」という意味合いが。
持参するケーキはたいてい手作り。小さな子どもの場合は親が、大きくなれば本人がケーキを焼いて持っていくことが多いです。日本人からみれば面白いことに、ドイツのスーパーには手作りケーキを持ち運ぶためのプラスチックケースも売っているんですよ。
ドイツの街なかでプラスチックケースに入った大きなケーキを持ち歩いている人を見かけたら、その人はバースデーボーイ・ガールの可能性大です。
ドイツの誕生日は本人主導
日本の誕生日祝いが周囲にお膳立てされることが多いのに対し、本人が誕生日パーティーを主催したり、本人がケーキを振る舞ったりするドイツは、ずいぶんと「本人主導」の印象があります。
その背景には、「またひとつ年を重ねられたのは、周囲に支えられたから。誕生日パーティーは、支えてくれた人々への感謝の気持ちを表す場である」という考えがあるから。加えて、「自分の誕生日パーティーを開くかどうかくらい、自分で決めたい」というドイツ人の旺盛な自立心も関係しているようです。
おわりに
ドイツにおける誕生日とは、「お世話になった人に感謝する日」「人とのかかわりのなかで生きている自分を再認識する日」といえそうです。子どもの場合は、「社会性を育み、大人への階段をのぼる日」ともいえますね。
ドイツ語で「誕生日おめでとう」は「Alles Gute zum Geburtstag(アレス・グーテ・ツム・ゲブルツターク)」。誕生日を迎えるドイツ人の知り合いがいる人は、フライイングしないようにこの言葉をかけてあげてください。