重厚なレンガ建築がたまらない、穴場的世界遺産の町ヴィスマール【北ドイツ】

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北ドイツには、中世後期から北ヨーロッパの経済圏を支配した、ハンザ同盟の栄華を物語る街がいくつもあります。

現在もドイツ第2の都市として君臨するハンブルクや、「バルト海の女王」とたたえられたリューベックがその代表格ですが、ほかにも穴場の小さな町々が眠っています。そのひとつが、旧市街が世界遺産に登録されているヴィスマール。

レンガ色の町並みが醸し出す重厚感と、小都市ならではの素朴なあたたかみが共存する、ヴィスマールの町を歩いてみましょう。

北ドイツのハンザ都市ヴィスマール

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北ドイツにあるヴィスマールは、ハンザ都市の面影を残す小さな港町。1229年に北ドイツのリューベックなどからやってきた移民が、町の建設をはじめました

当時頻発していた海賊の襲撃に対抗すべく、1295年にヴィスマール、リューベック、ロストックの北ドイツ3都市が協定を結成。これが、のちにバルト海沿岸地域の貿易を掌握し、北ヨーロッパの経済圏を牛耳った、ハンザ同盟の前身になりました。

ハンザ同盟の一員として栄えたものの、ヴィスマールの地位は常に盤石だったわけではありません。1648年、三十年戦争の講和条約であるヴェストファーレン条約によって、ヴィスマールは、シュトラールズントとともにスウェーデン領となります。最終的にドイツに復帰したのは、1903年のこと。

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現在も、ヴィスマールの町には「スウェーデンの頭」と呼ばれる像があったり、夏には「スウェーデン祭り」が開催されたりと、スウェーデンとのかかわりを示す遺産があります。

ヴィスマールへのアクセス

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ヴィスマールへのアクセスは、ハンブルク中央駅からRE(快速)でシュヴェリーン乗り換えで、2時間15分前後。シュヴェリーン中央駅からヴィスマールまでは30分程度です。

ヴィスマールとともに世界遺産に登録されているシュトラールズントからは、RE(快速)とRB(普通)で、2時間15分程度。途中ロストックで乗り換えがあります。

重厚感あふれるレンガの町並み

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ヴィスマールの魅力は、なんといっても重厚感あふれるレンガ造りの町並み。小さな町でありながら、ヴィスマールはバルト海南部では最も保存状態の良いハンザ都市のひとつで、旧市街は、シュトラールズントの旧市街とともに、世界遺産に登録されています。

なかでもレンガ造りのゴシック建築群が有名で、デンマークとドイツ、ポーランドを通る「ヨーロッパ・レンガゴシック街道」のルートにおける重要なポイントのひとつ

レンガゴシック建築に用いられる赤レンガは、一つひとつ作業で形成して焼かれているのみならず、多彩な装飾が施されていて、すべての建物にそれぞれの個性があります。

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パステルカラーの軽やかな木組みの家々が多い南ドイツとは異なり、北ドイツの沿岸部で目につく重厚なレンガ造りの建物は、この地域の港町の風景にぴったり。ハンザ同盟の面影が残る旧市街で、バルト海の風を感じてください。

ヴィスマールはさほど観光地化されていない穴場都市で、世界遺産といえど、ひなびた風情のある日常風景が楽しめます

マルクト広場

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世界遺産に登録されているヴィスマール旧市街の中心地が、マルクト広場。ヴィスマールのマルクト広場は、ちょうど100メートル×100メートルの正方形をしていて、広場に面して市庁舎やレストランなどが建っています。

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マルクト広場でひときわ目を引くのが、青銅製の屋根がついた給水塔かつてビールの醸造が盛んだったヴィスマールでは、大量の水が必要とされたため、市中に給水塔や水路が整備されたのです

ドイツ全土でも、これほど装飾的な給水塔は貴重な存在。もともと、オランダ・ユトレヒトの建築家の設計に基づいて1595~1602年にかけて造られ、現在の姿は戦後1970年代に復元されたものです。

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給水塔のほかにもうひとつ注目すべきが、ひときわ貫禄あふれるレンガ造りの建物「アルター・シュヴェーデ(Alter Schwede)」。1380年建造のヴィスマールで最も古い建物で、現在は魚料理がおいしいレストランとして営業しています。

マリエン教会

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ヴィスマール観光のハイライトともいえるのが、ヨーロッパ・レンガゴシック街道のルート上でも重要視されている教会群。

ヴィスマールを訪れると、小さな町にもかかわらず、いくつもの教会が建っていることを不思議に思うかもしれません。狭い範囲に教会が密集しているのは、かつては階級や職種によって通う教会が分かれていたためです。

マルクト広場の近くにたたずんでいるのが、14世紀に建てられたマリエン教会。80メートルの塔は、かつてヴィスマールへと帰港する船の目印になっていたといいます。第二次世界大戦で爆撃を受け、現在は塔部分のみが残ったため、ロケットのような独特の姿に・・・

ゲオルグ教会

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13世紀にはじめて建てられたゲオルグ教会は、かつて商人が足繁く通ったという教会。外観は立派ですが、第二次世界大戦で大きな被害を受けたため、現在も修復が進められています。

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内部に見るべきものはほとんどありませんが、この教会の見どころは、展望台からの景色。展望台からは、赤茶屋根の並ぶ世界遺産の町並みが一望できます

ニコライ教会

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ヴィスマールにあるレンガ造りの三大教会のなかで、唯一教会本来の祈りの場として機能しているのが、ニコライ教会。フランスの大聖堂建築をモデルにし、1380~1508年ごろに建てられた、後期ゴシック様式の教会です

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ドイツで4番目の大きさにあたる、高さ37メートルの身廊をもつ堂々たる造りで、かつては船乗りや漁師たちの信仰を集めていたといいます。赤レンガの柱が並ぶ教会内部は、荘厳な雰囲気。とりわけ、後期バロック時代の大祭壇が見ものです。

ひなびた雰囲気の旧港

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旧市街の中心部を散策したら、「水の門」から出て、旧港周辺も散策してみましょう。

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小さなボートが並び、水辺にシーフードレストランが並ぶ旧港周辺は、日本の小さな漁師町を彷彿とさせるような、ひなびた雰囲気。いい意味で世界遺産の町であることが嘘のような、ゆったりとした時間が流れています。

おわりに

ハンザ同盟の一員として栄えたことを裏づける華やかな町並みと、地方都市の素朴な表情が共存する風景が、ヴィスマールの魅力。

人混みに揉まれずのんびりと街歩きが楽しめる、北ドイツの穴場的世界遺産の町を訪ねてみませんか。