40以上の世界遺産を抱える、世界遺産大国ドイツ。ドイツが誇る世界遺産のなかでも、「宮殿」といえば、まっさきに思い浮かぶのがサンスーシ宮殿ではないでしょうか。
ベルリンから日帰りできるポツダムのサンスーシ宮殿は、東ドイツを代表する観光スポットのひとつ。プロイセンの王が愛した憩いの宮殿に出かけてみましょう。
王が愛した世界遺産・サンスーシ宮殿
ポツダムの代名詞であるサンスーシ宮殿は、1745~1747年にプロイセン王国のフリードリヒ大王(フリードリヒ2世)によって建てられた宮殿。1990年、宮殿と庭園は「ポツダムとベルリンの宮殿群と公園群」の一部として世界遺産に登録されました。
「サンスーシ」とは、フランス語で「憂いのない」という意味で、日本語では「無憂宮」とも呼ばれます。
夏の離宮として建てられたサンスーシ宮殿は、政務から離れて王が個人的な楽しみに興じるための、憩いの宮殿として建てられたもの。宮殿の建設に際しては、王自らが素案をスケッチするほどの力の入れようだったといいます。
自らの理想が詰まったサンスーシ宮殿をたいそう気に入った王は、結局35歳から74歳で亡くなるまでのほとんどの時間をここで過ごしました。
「人生の喜びと自然との一体感」をテーマに建てられたサンスーシ宮殿。
建物の全長は100メートル、主たる部屋数は12と、王の宮殿としては大きなものではありませんが、ここには、かつての王が感じていた生きる喜びが今も息づいているような気がします。
サンスーシ宮殿へのアクセス
世界遺産の町ポツダムへは、ベルリンから日帰り観光が可能。ベルリン中心部からポツダム中央駅までは、列車(RE)で約25分。30分に1本程度運行しています。(ほかに近郊列車のSバーンも利用可能)
ポツダム中央駅からサンスーシ宮殿までは歩くと遠いので、バスの利用がおすすめ。ポツダム中央駅前から、バスX15、614、695番に乗車し、「Schloss Sanssouci」で下車。バス停から宮殿までは徒歩すぐです。
サンスーシ宮殿チケットの入手方法
サンスーシ宮殿ではチケットの販売は行っていないので、チケット購入には注意が必要。
サンスーシ宮殿のチケットの入手方法にはおもに2通りあり、ひとつは事前にインターネットで予約する方法と、もうひとつは当日ビジターセンター(宮殿とは別の独立した建物)で直接購入する方法です。
サンスーシ宮殿は、チケットに記載された指定の時間にのみ入場できるシステムをとっており、夏の観光シーズンともなれば、チケット購入から入場可能時間まで数時間空いてしまうことも。
時間を無駄にせずスムーズに入場したいなら、インターネットで事前に予約しておくのが無難です。当日ビジターセンターで購入するなら、朝一番を狙いましょう。
サンスーシ宮殿のチケットには、サンスーシ宮殿にのみ入場できるチケット(12ユーロ)と、サンスーシ宮殿を含め、ポツダムにある13の宮殿に入場できる共通券「sanssouci+」(19ユーロ)があります。
ほかの宮殿も観光する時間があるなら、sanssouci+が断然お得。なお、インターネットで事前に予約ができるのは、sanssouci+のみです。
ロココ様式の優美な宮殿
サンスーシ宮殿は、フリードリヒ大王が好んだフランスの建築様式を採り入れたロココ様式で建てられています。
権力や財力を誇示するバロック様式とは異なり、ロココ様式は王侯貴族が和やかなプライベートな時間を過ごせるように発展した建築・装飾の様式。その意味でも、ロココ様式は「憩いの宮殿」であるサンスーシ宮殿にぴったりのスタイルであったといえるでしょう。
サンスーシ宮殿の建物はやや高いところに建てられているため、その傾斜を生かして宮殿の足元には6段のブドウのテラスが設けられています。
畳みかけるような階段状の緑のブドウ畑とクリームイエローの宮殿の美しいコントラストは、「人生の喜びと自然との一体感」を象徴する光景。サンスーシ宮殿は、建物単体だけでなく、庭園とともに眺めて完成するものだといえるでしょう。
さらにクリームイエローの宮殿の外壁には、ブドウをあしらった彫像が連なります。
ブドウはサンスーシ宮殿において身近な自然を象徴する存在で、宮殿の内部装飾にも繰り返し登場するモチーフ。サンスーシ宮殿を観光する際には、ブドウにも注目してみてください。
華麗なる宮殿内部
外観は自然との一体感を大切にした控えめな装飾で仕上げられたサンスーシ宮殿ですが、内部には王の宮殿らしい華麗なる世界が広がっています。
宮殿内にはおもに12の部屋があり、「大理石の間」や「謁見の間」「楕円の間」などが見どころ。「ポツダムのロココ様式」とも呼ばれる貝殻模様の室内装飾が見事です。
音楽を演奏するためのコンサート室があるのも特徴的。ここでは、植物からクモの巣にいたるまで、自然がさまざまな形で表現された「フリードリッヒ風ロココ」と呼ばれる装飾が目を惹きます。
フリードリヒ大王はここでコンサートを楽しんだり、自らフルートを演奏したりしたとか。王が実際に使ったというフルートも室内に展示されています。
ひときわ荘厳な感じを受けるのは、「大理石の間」。この広間は宮殿の中心であり、祝賀の場でもありました。本物のイタリア産大理石を使ったという豪華で格式ばった空間は、温かみのある王のプライベートな空間とは違った雰囲気です。
その用途に応じて、色とりどりのさまざまな部屋があるサンスーシ宮殿。面白いのは、フリードリヒ大王の存命中も、ふさわしい身なりをすれば、王が不在のときに宮殿内を見学することができたということ。一般の見学者は案内用の冊子を購入することもできたといいます。
今と変わらず、当時からサンスーシ宮殿は「観光スポット」だったのですね。
広大な庭園
建物だけでなく、サンスーシ宮殿の前に広がる庭園も世界遺産の構成要素のひとつ。このサンスーシ庭園は290万平米もあり、庭園のメインストリートだけで2.5キロもあるという広大なものです。
庭園には、噴水や彫像に加え、中国茶館やオランジェリー、新宮殿など、個性豊かな大小さまざまな宮殿が点在しています。主要な宮殿をすべて見て周るだけでも丸一日では足りないほど。
共通券「sanssouci+」を購入すれば、これらすべての見どころに一枚のチケットで入場できるので、とてもお得。
ポツダムを訪れたら、サンスーシ宮殿だけとはいわず、じっくりと時間をかけてほかの宮殿にも足を運んでみてはいかがでしょうか。