ドイツは、全部で46件もの世界遺産を有する世界4位の世界遺産大国。ドイツの世界遺産は、3600万~5700万年前の新生代・始新世前期の化石が発見された採掘場から、中世の古城や街並み、製鉄所などの20世紀の近代産業遺産にいたるまで、年代とジャンルが幅広いところに特徴があります。
2019年7月、新たに「エルツ山地(クルスナホリ)鉱業地域」と「アウクスブルクの水管理システム」の2件が新たに世界遺産登録され、ドイツの世界遺産は全部で46件になりました!
ドイツの世界遺産のラインナップは?ドイツの世界遺産を旅するなら、どこがおすすめ?そんな疑問にお答えすべく、ドイツの世界遺産全46件リストと、特におすすめの10物件をご紹介します。
Contents
ドイツの世界遺産全46件リスト
2017年7月の世界遺産委員会で、新たな2件の世界遺産が誕生。これにより、ドイツの世界遺産は全部で46件となり、イタリア(55件)、中国(55件)、スペイン(48件)に次いで世界4位の多さとなりました。
1978年 アーヘン大聖堂
1981年 シュパイヤー大聖堂
1981年 ヴュルツブルクのレジデンツと宮廷庭園
1983年 ヴィースの巡礼教会
1984年 ブリュールのアウグストゥスブルク城と別邸ファルケンルスト
1985年 ヒルデスハイムの聖マリア大聖堂と聖ミカエル教会
1986年 トリーアのローマ遺跡群、聖ペテロ大聖堂及び聖母マリア教会
1987年 ハンザ同盟都市リューベック
1987年 ローマ帝国の国境線
1990年 ポツダムとベルリンの宮殿群と公園群
1991年 ロルシュの大修道院とアルテンミュンスター
1992年 ランメルスベルク鉱山、歴史都市ゴスラーとオーバーハルツ水利管理システム
1993年 バンベルク市街
1993年 マウルブロン修道院の建造物群
1994年 クヴェトリンブルクの聖堂参事会教会、城と旧市街
1994年 フェルクリンゲン製鉄所
1995年 メッセル採掘場の化石発掘現場
1996年 ケルン大聖堂
1996年 ワイマール、デッサウ及びベルナウのバウハウスとその関連遺産群
1996年 アイスレーベンとヴィッテンベルクにあるルター記念建造物群
1998年 古典主義の都ワイマール
1999年 ベルリンのムゼウムスインゼル
1999年 ヴァルトブルク城
2000年 デッサウ・ヴェルリッツの庭園王国
2000年 僧院の島ライヒェナウ
2001年 エッセンのツォルフェアアイン炭鉱業遺産群
2002年 シュトラールズント及びヴィスマールの歴史地区
2002年 ライン渓谷中流上部(ロマンティック・ライン)
2004年 ブレーメンのマルクト広場の市庁舎とローラント像
2004年 ムスカウ公園
2006年 レーゲンスブルクの旧市街とシュタットアムホーフ
2007年 カルパティア山脈などの欧州各地のブナ原生林群
2008年 ベルリンのモダニズム集合住宅群
2009年 ワッデン海
2011年 アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群
2011年 アルフェルトのファグス工場
2012年 バイロイト辺境伯歌劇場
2013年 ヴィルヘルムスヘーエ公園
2014年 コルヴァイのカロリング期ヴェストヴェルクとキウィタス
2015年 ハンブルクの倉庫街とチリハウスを含む商館地区
2016年 ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-
2017年 シュヴァーベン・ジュラにおける洞窟群と氷河時代の芸術
2018年 ナウムブルク大聖堂
2018年 ヘーゼビューとダーネヴィルケの境界遺跡群
2019年 エルツ山地(クルスナホリ)鉱業地域 ※チェコとドイツにまたがる遺産
2019年 アウクスブルクの水管理システム
※2019年7月現在。
アーヘン大聖堂
1978年に世界遺産登録されたアーヘン大聖堂は、ユネスコ世界遺産の第一期登録物件のひとつ。それが何を意味するかといえば、アーヘン大聖堂はドイツで最初の世界遺産であるのはもちろんのこと、世界初の世界遺産のひとつでもあるということです。
ドイツで最も西に位置する街、アーヘンの大聖堂は、カール大帝の命で786年に建設が始まった北部ヨーロッパ最古の大聖堂。936年から1531年の600年間にわたり、30人の神聖ローマ皇帝の戴冠式が行われてきたために、「皇帝の大聖堂」の異名をとっています。
ドイツの大聖堂は、ロマネスク様式とゴシック様式が多いですが、アーヘン大聖堂の初期の部分は、それらの様式が確立されるよりも前に造られたため、古典主義やビザンティン様式、ドイツ・ロマネスク様式が入り混じったエキゾチックな姿をしています。
なかでも、8角形のドーム型天井を覆う黄金色のドームや、のちに増設された25メートルの高さのステンドグラスに彩られた礼拝堂「ガラスの家」のきらびやかさは息をのむほど。
ライン渓谷中流上部(ロマンティックライン)
ドイツを代表する情緒あふれる景観として知られているのが、「ロマンティックライン」と呼ばれるライン渓谷中上流部です。
全長1200キロメートルを超え、「ドイツの父なる川」と呼ばれるライン川。そのなかでも最も美しいといわれるのが、マインツ・コブレンツ間の約65キロメートルで、マインツ近郊のビンゲン/リューデスハイムとコブレンツ間が世界遺産に登録されています。
この周辺には、数多くの古城や伝説に彩られた妖精の岩「ローレライ」、ブドウ畑に囲まれた中世の街など、名所と絶景のオンパレード。船に乗ってライン川クルーズを楽しんだり、古城ホテルに泊まったりして、川の流れのようにのんびりとした時間を楽しみたいものです。
ヴァルトブルク城
ドイツには数々の古城がありますが、単独で世界遺産に登録されている唯一の中世の城が、ドイツ中部アイゼナハ郊外にそびえるヴァルトブルク城。
日本での知名度は高いとはいえませんが、「ドイツ文化の源流」「ドイツ人の心のふるさと」などと呼ばれるヴァルトブルク城は、ドイツ史上最も重要な城のひとつに数えられています。
現在見られるヴァルトブルク城の主要部部は、1170年に後期ロマネスク様式で建てられたもの。小高い丘の上にそびえる城塞は、「重厚」という表現がぴったりで、一瞬にして中世にタイムスリップしたような気分に。
何世紀にもわたって、この城ではドイツの歴史に残る重要な出来事が繰り広げられてきました。
13世紀にはのちに聖人となったハンガリー王女エリーザベトがこの地に嫁いできて、城内で暮らしたり、多くの宮廷恋愛歌人が詩歌を競い合ったりしています。その模様は、のちにワーグナーのオペラ「タンホイザー」の題材となりました。さらに16世紀には、宗教改革者ルターがヴァルトブルク城にかくまわれ、新約聖書のドイツ語訳を完成させています。
歴史の重みを感じさせる味わい深い内装も見ごたえ十分。ヴァルトブルク城の「歌合戦の間」と「祝宴の間」に感銘を受けたバイエルン王ルートヴィヒ2世は、かのノイシュヴァンシュタイン城にそれらをモデルにした「歌人の間」を造らせました。
クヴェトリンブルクの聖堂参事会教会、城と旧市街
知る人ぞ知るドイツの古都が、クヴェトリンブルク。ベルリンから日帰りもできるハルツ地方に位置するこの街は、ヨーロッパでも屈指の木組みの街として知られています。その数は、なんと1300。あらゆる年代のあらゆる建築様式の木組みの建物が残されているクヴェトリンブルクは、「天井のない木組みの博物館」ともいわれているほどです。
旧市街に足を踏み入れれば、時間が止まっているかのような古色蒼然とした街並みに、「21世紀のドイツにこんな街が残っているなんて!」と驚くことでしょう。
美しい木組みの家々とともにクヴェトリンブルクを有名にしているのが、「ドイツ発祥の地」とも呼ばれる城山。この地がかつて、ドイツの初代王、ハインリヒ1世が創設したザクセン王家の重要な拠点として位置づけられたためです。
城山の最大の見どころは、重厚感あふれる聖セルヴァティウス教会。シンプルながらも「ロマネスク様式の傑作」との呼び声高い教会で、ドイツ屈指の教会財宝が納められています。街のあちこちから眺められる教会の姿は、きっと忘れられない風景として心に残るはずです。
バンベルク市街
バイエルン州の古都バンベルクは、戦禍の激しかったドイツにおいて、奇跡的に戦禍を逃れた都市のひとつ。旧市街はまるごと世界遺産に登録されており、その美しい街並みは「バイエルンの真珠」と称えられています。
バンベルクを象徴する風景のひとつが、レグニッツ川沿いに建つ旧市庁舎。白壁と黄色の木組みがメルヘンチックな雰囲気を醸し出していますね。
バンベルク旧市街のランドマークが、小高い丘の上にそびえる大聖堂。4本の塔をもつドイツ有数の聖堂で、現在見られる姿は1237年にゴシック様式を基調として建てられたものです。
内陣に飾られている作者不明の彫像「バンベルクの騎士」は、ドイツ中世美術の傑作として有名。また、この大聖堂を建てたハインリヒ2世と妃の墓石には、中世ドイツが生んだ天才彫刻家リーメンシュナイダーによる見事な彫刻が施されています。
大聖堂周辺とがらりと雰囲気が変わるのが、「小ヴェネツィア」と呼ばれる地区。かつて漁師たちが住んでいた木造の家々が並ぶノスタルジックなエリアで、「山の手」の雰囲気漂う大聖堂地区とは対照的に、ほっとするような素朴な風景が広がっています。
レーゲンスブルクの旧市街とシュタットアムホーフ
バイエルン州にあるもうひとつの世界遺産の街が、ドナウ河畔の古都レーゲンスブルク。バンベルク同様、この街も戦禍を免れ中世そのままの風景をとどめているため、「ドイツ中世の奇跡」と呼ばれます。
レーゲンスブルクは、ローマ時代からドナウ川沿いの交通の要衝として発展してきた街。ドナウ川の対岸から眺めるパステルカラーの旧市街は、絵のような美しさです。
レーゲンスブルク最大の見どころのひとつが、高さ105メートルの尖塔を持つ大聖堂。バイエルン州で最も重要なゴシック建築とされていて、「ドームシュパッツェン(大聖堂のスズメたち)」と呼ばれる、レーゲンスブルク少年合唱団の歌声も有名です。
ドナウ川に架かる石橋は、12世紀に造られたドイツ最古の石橋。そしてドナウ川のほとりには、石橋建設の作業員のための食堂に端を発するという、ドイツ最古のソーセージ店「ヒストーリッシェ・ヴルストキュッヘ(Historische Wurstküche)」があります。
天気の良い日、外のテラス席で、ドナウ川を眺めながらいただく焼きソーセージは最高ですよ。
ハンザ同盟都市リューベック
ドイツの旧市街というと、パステルカラーの木組みの家々が並ぶ可愛らしい街並みを想像するかもしれません。しかし、ハンザ同盟の盟主として君臨し、「ハンザの女王」「バルト海の女王」とうたわれた北ドイツの古都リューベックの街並みは、ひと味もふた味も違っています。
荘重さと華やかさを兼ね備えたレンガ色の街並みは、知らなかったドイツの魅力を教えてくれるかもしれません。
リューベックのシンボルが、旧市街の入口に建つホルステン門。旧50ドイツマルク紙幣に描かれていたドイツで最も有名な門で、2つのとんがり屋根をもつメルヘンチックな姿が印象的です。
旧市街の中核をなすマルクト広場周辺にも、リューベックを代表する壮麗な建造物がずらり。ゴシック様式やルネッサンス様式など、さまざまな様式が入り混じった市庁舎は、往時のリューベックの富の象徴。リューベック特有の黒レンガ造りの外観も印象的ですが、ガイドツアーで見学できる内部も宮殿のような豪華さです。
トリーアのローマ遺跡群、聖ペテロ大聖堂及び聖母マリア教会
「ドイツ最古の都市」と称されるのが、ルクセンブルクとの国境に近い、西ドイツに位置するトリーア。2000年の歴史をもつ街にはローマ時代の遺跡が点在し、ほかのドイツの都市にはない独自の景観が楽しめます。
トリーアのシンボルが、ドイツにおけるもっとも重要なローマ遺跡である「ポルタ・ニグラ」。「黒い門」を意味するその名の通り、黒い砂岩で積み上げられて造られていて、門の上からは、自然に囲まれたトリーアの美しい街並みが見渡せます。
ポルタ・ニグラや、皇帝の大浴場跡「カイザーテルメン」などのローマ遺跡群に加え、中世の教会建築もトリーアを代表する建造物。壮大な初期ロマネスク様式の大聖堂と、内部で大聖堂とつながっているゴシック様式の聖母教会も、ローマ遺跡群とともに世界遺産に登録されています。
まるで城砦のように堅固な印象の大聖堂が、ふたまわりほど小さな教会となって眼前に迫りくる光景は迫力満点。さまざまな時代の歴史的建造物が一度に見られるトリーアは、建築好きにはたまらない街だといえるでしょう。
ケルン大聖堂
おそらくドイツで最も有名な教会であり、最も有名なドイツの世界遺産が、ケルン大聖堂。年間およそ600万人が訪れるケルン大聖堂は、押しも押されもせぬドイツを代表する観光スポットのひとつです。
ケルン中央駅に降りた瞬間、大聖堂のあまりの大きさと迫力に圧倒されるはずです。それもそのはず、高さ157メートル、奥行き144メートル、幅86メートルのケルン大聖堂は、ゴシック様式の建造物としては世界最大。1248年に着工し、完成を見たのは600年以上先の1880年のことですから、スケールは群を抜いています。
たたみかけてくるように連なるゴシック様式の天井のアーチに、色鮮やかなステンドグラスが荘厳な雰囲気を醸し出す内部も見どころ満載。なかでも、祭壇奥にある、東方三博士の聖遺物を収めた世界最大の黄金細工の聖棺は必見です。
ポツダムとベルリンの宮殿群と公園群
ベルリン近郊に位置するポツダムは、世界遺産の宮廷都市。ポツダムといえば、なんといってもサンスーシ宮殿が有名ですが、ポツダム市内の10を超える宮殿が世界遺産の登録範囲に含まれており、主要な宮殿をすべて見て周ろうと思えば、一日かがりでも足りないくらいです。
ポツダムで絶対に見逃せない宮殿のひとつが、世界的に有名なサンスーシ宮殿。フランス語で「憂いのない」という名をもつロココ様式の華麗なる宮殿で、プロイセン王フリードリヒ2世の夏の居城として建てられました。とりわけ優美なのが、「フリードリヒ風ロココ」と呼ばれる自然をモチーフにした装飾が目を引くコンサート室。ブドウ畑と一体化した、クリームイエローの外観も印象的です。
サンスーシ宮殿前に広がるサンスーシ庭園は、まるごと世界遺産。メインストリートを通って直線距離を歩いても2.5キロにもおよぶ広大な庭園です。そのなかに、貝殻細工の装飾で有名な広間がある新宮殿や、エキゾチックな姿の中国茶館、南国ムード漂うオランジェリーなど、大小さまざまな宮殿が点在。
ポツダムの北部には、ポツダム会談の舞台となったツェツィリエンホーフ宮殿もあります。王が愛した華々しい宮殿から、世界史が動いた宮殿まで、多彩な宮殿がひしめき合うポツダムの宮殿群は、じっくりと時間をかけて楽しみたい世界遺産です。
おわりに
ドイツの世界遺産全46件のリストと、おすすめの世界遺産10選をご紹介しました。あなたが行ってみたい世界遺産は見つかりましたか。ドイツの世界遺産を旅して、ドイツの歴史と文化の豊かさにふれてみてください。