ベルリンの壁やブランデンブルク門、博物館島など、数々の有名観光地を擁するベルリン。
ですが、ベルリン市内にヴェルサイユ宮殿を彷彿とさせる美しい宮殿があることは意外と知られていないのではないでしょうか。
それが、フリードリヒ1世が王妃に捧げたシャルロッテンブルク宮殿。往時のプロイセン王の栄華が垣間見える、ベルリンの別世界です。
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シャルロッテンブルク宮殿
「ベルリンで最も美しい宮殿」といわれるのが、ベルリンの中心部からやや外れたところにあるシャルロッテンブルク宮殿。ブランデンブルク選帝侯で、初代プロイセン王となったフリードリヒ1世の命により建設された夏の離宮です。
1695年から3期に分けて建てられたシャルロッテンブルク宮殿が、現在見られるような姿になったのは1790年のこと。のちのフリードリヒ大王などが増改築を行い、長さ500メートルにも及ぶべルリンで最も大きな宮殿となりました。
100年近い歳月をかけて、複数の有名建築家によって増築が重ねられてきたため、基本となるバロック様式のほかにも、ロココ様式などさまざまな建築様式が混在しています。
1943年のベルリン大空襲では大きな被害を受けましたが、戦後修復されかつての輝かしい姿を取り戻しました。
ヴェルサイユ宮殿に憧れた王の夢を体現
フリードリヒ1世は、「猫背フリッツ」とも呼ばれていたほど優柔不断で風采の上がらない人物だったといいます。しかし虚栄心は人一倍強く、「太陽王」として君臨したフランスのルイ14世に強い憧れを抱き、ルイ14世がヴェルサイユ宮殿で過ごしたような贅沢な生活を夢見ていました。
その夢を実現するための足がかりとして建てられたのが、このシャルロッテンブルク宮殿だったのです。
それもあってか、宮殿内部には、王の権威の象徴としてギリシャやローマの英雄を題材にしたタペストリーが飾られていたり、鏡を多用した部屋があったりと、どこかヴェルサイユ宮殿を彷彿とさせるインテリアを見ることができます。
王妃に捧げた美しき宮殿
シャルロッテンブルク宮殿は、フリードリヒ1世の虚栄心を満たすための宮殿であった一方で、王妃のゾフィー・シャルロッテに捧げた宮殿でもありました。
しかし、王妃のための夏の離宮として建てられた当初は、「シャルロッテンブルク宮殿」という名前ではなく、「リーツェンブルク宮殿」と名付けられていました。
しかし1705年、王妃がわずか36歳の若さで亡くなったため、フリードリヒ1世はその死を悼むため、「シャルロッテンブルク宮殿」に改称したのです。
シャルロッテンブルク宮殿へのアクセス
シャルロッテンブルクはベルリン西部、ベルリン観光の中心地から少し外れた落ち着いたエリアにあります。
ベルリン中心部からシャルロッテンブルク宮殿への行き方はいくつかあり、Uバーン(地下鉄)のRichard-Wagner-Platz駅から徒歩15分。Sバーン(近郊列車)のWestend駅から徒歩で10分強です。
できるだけ歩かず楽に行きたいという場合、ベルリン動物園駅からバスに乗り換えるのがわかりやすいでしょう。まずはSバーンまたはUバーンでベルリン動物園駅 (ツォー駅)に到着したら、駅前からバスM45番に乗車。Klausenerplatzで下車すれば、宮殿がすぐ近くに見えます。(バスの所要時間は15分弱)
シャルロッテンブルク宮殿はいくつかの部分に分かれており、本棟のほかに新翼や陶器博物館として使われているベルベデーレなど、たくさんの見どころがあります。
チケットには、本棟にのみ入場できるもの(10ユーロ)と、新翼やベルベデーレを含め、敷地内の宮殿すべてに入場できる共通券「charlottenburg+」(17ユーロ)の2種類があります。(charlottenburg+はベルリンウェルカムカードの割引対象)
時間に余裕があれば共通券を購入して、じっくりと周ってみるのがおすすめです。
貫録漂う宮殿本棟
シャルロッテンブルク宮殿はいくつかの部分に分かれており、本棟のほかに新翼や陶器博物館として使われているベルベデーレなど、たくさんの見どころがあります。
観光の中心となるのは、フリードリヒ1世と妃の部屋が置かれた宮殿本棟。クリームイエローの外壁にブルーのドームを組み合わせた外観は、すっきりとした印象ながら優雅。力強い直線と、女性らしい曲線が融合した美しいシルエットが印象的です。
高さ48メートルの丸屋根の上には、ローマ神話における運命の女神、フォルトゥーナの像が黄金色の輝きを放っています。
「歴史の間」と呼ばれる本棟には、「謁見の間」や「鏡張りの寝室」、「紅のダマスクの間」など、フリードリヒ1世と妃が公的・私的に利用したきらびやかな部屋の数々が。
各部屋は絵画やスタッコ装飾、シャンデリア、タペストリー、陶磁器などで豪華に飾られており、かつての王の栄光が肌で感じられます。
天井画とスタッコを組み合わせた立体的な装飾や、西洋的な空間に東洋の壺や像、東洋風のペイントが施されたピアノなどが配置されているのに注目。西洋と東洋が融合したエキゾチックなインテリアは、シャルロッテンブルク宮殿の最大の魅力のひとつです。
圧巻の「陶器の間」
本棟最大の見どころが、鏡と東洋の陶器が競演する「陶器の間」。当時ヨーロッパの王侯貴族のあいだでもてはやされたシノワズリ(中国趣味)を、「これでもか!」というスケールで体現した空間です。
金色の壁に2700点以上の中国や日本の陶磁器が飾られた光景は、息を吞むほど豪華絢爛。その強い個性もあいまって、一度見ると忘れられないほどの強烈な印象を残します。この部屋を見るためだけでもシャルロッテンブルク宮殿を訪れる価値があるといっても過言ではないほど。
この陶器の間は、王の栄光と権力を象徴しており、暁による夜の追放を題材にした天井画は、日が沈むことのない王の栄光を表しています。
ちなみに、王妃シャルロッテはこの部屋の完成を見ることはありませんでした。彼女に捧げられた宮殿とはいえ、着工から10年後に亡くなったために、完成を見られなかった部屋も少なくなかったのです。
フリードリヒ大王が住んだ新翼
本棟の隣に建つ新翼はロココ調で、本棟よりもずっとシンプルなすっきりとした外観。重厚感漂う本棟に比べると、内装にも気負いのない軽やかな雰囲気が感じられます。
ここで必見なのが、ロココの可憐な装飾が印象的な「ゴールデンギャラリー」。フリードリヒ大王の時代に造られた最も重要なロココのインテリアのひとつです。
本棟に比べると、全体的にリラックスしたムードが感じられる新翼ですが、それぞれにまったく印象の異なる個性豊かな装飾が施された部屋の数々は、見ごたえ十分。
良質な金銀製品や陶磁器のコレクションも充実していて、工芸品好きならこちらも見逃せませんよ。
おわりに
東ドイツの宮殿といえば、なんといってもポツダムのサンスーシ宮殿が有名ですが、シャルロッテンブルク宮殿も美しさでは引けをとりません。
にもかかわらず、サンスーシ宮殿に比べるとずっと空いていて、ゆっくりと周れるのもシャルロッテンブルク宮殿のいいところ。
ベルリンを訪れたなら、フリードリヒ1世の夢を体現した美しき夏の離宮に会いにいってみてはいかがでしょうか。