ドイツ鉄道旅の前に知っておきたい10のこと~トラブル防止&快適でお得な旅のために

ドイツを周遊するなら、現地交通手段の利用が必須。飛行機、鉄道、高速バスと、いくつかの選択肢がありますが、最も利用頻度が多いのが鉄道。対角線上の端から端のような極端な移動でない限り、ドイツの国内移動は鉄道が最も早くて便利です。

その一方で、日本と同じ感覚でドイツの鉄道に乗ると、痛い目に遭うことがあるのも事実。思いがけないトラブルに遭わないため、快適かつお得に旅行をするために、ドイツ鉄道旅の前に知っておきたいことをお伝えします。

ドイツ鉄道旅の主役は「ドイツ鉄道(DB)」

ドイツ鉄道旅で最も利用頻度が高いのが、「ドイツ鉄道(Deutsche Bahn)」。ドイツではしばしば「DB(デーベー)」と略されます

ドイツ鉄道は元国鉄で、現在はドイツ最大の鉄道会社。日本でいえばJRのような存在ですね。ただし日本と違って、地域ごとの分社化はありません。

ドイツ鉄道の路線網を、各地の私鉄の路線が補っているのが、ドイツの鉄道事情。しかし、日本と違って、乗る際に「ドイツ鉄道(DB)か私鉄か」を気にする必要はほとんどありません

基本的に、ドイツ鉄道の駅に私鉄が乗り入れる形となっているので、意識せずとも乗り場にたどり着けますし、ドイツ鉄道のホームページで私鉄の運行スケジュールも確認可能。さらに、ドイツ鉄道が販売する鉄道パスは、ほとんどの私鉄区間でも有効です。

事前ネット予約が超お得

ドイツ鉄道を安く利用したい!そんなときは、事前のネット予約がおすすめです。ローカル線は予約対象外ですが、ICE(ドイツ版新幹線)やIC(都市間特急)などは予約可能で、事前予約割引が受けられます

驚くべきが、その割引率。利用する路線や時間帯、予約のタイミングによって異なりますが、うまくすれば最大80パーセント程度の割引が受けられるのです

試しにフランクフルト発ベルリン行きで任意の日付を検索してみると、最安値はなんと19.9ユーロから!ICE(ドイツ版新幹線)に4時間以上乗ってこの金額tとは…日本ではありえない安さです。

ただし、最安値の「Super Sparpreis」を選んだ場合、必ず選んだ電車に乗る必要があり、予約のキャンセルはできないのでご注意を。(電車の遅延で乗り継ぎができなかった場合などは、次の電車に乗ることができます)

とにかくお得なので、ドイツ旅行の日程が確定しているなら、事前ネット予約を使わない手はありませんね。乗車日が近づいてくると値段が上がる傾向にあるので、旅行の日程が決まったら、鉄道の予約はお早めに。

予約の際は、「Online-Ticket」を選び、メールで送られてくるチケットを印刷するか、スマホなどに保存し、必要なときに見せられるようにしましょう

ドイツの鉄道駅には改札がない

日本と違って、ドイツの鉄道駅には改札がありません。そのため、切符を持っていなくても、来た電車に飛び乗ってしまうことができるのです。では、ドイツではどうやって乗客の不正(無賃乗車など)をチェックしているかというと、乗務員による検札。人の手によるアナログ対応なのですね。

検札は回ってくる場合とこない場合がありますが、もし社内で有効なチケットを持っていないことが発覚した場合は、60ユーロの罰金が科されます。意図的に無賃乗車をする人はほとんどいないと思いますが、うっかり切符を紛失した場合も罰金を科されるので、管理には十分注意しなければなりません。

また、誤った切符を購入してしまった場合も罰金が科されることがあるので、切符を購入する際は、区間などをちゃんとチェックするようにしましょう

ドイツの電車はよく遅れる

「ドイツ人は真面目で時間に正確」。多くの日本人はそう思っていますよね。決して間違ってはいないのですが、残念ながら、鉄道に関してはその限りではありません。

ドイツ鉄道は、80パーセントの定時運行率を目指していますが、ドイツ鉄道は6分未満の遅れは「遅延」にカウントしていません。数分の遅れはデフォルトといってもいいくらいで、ドイツでは電車が遅れるのは常識です

むしろ遅延が5分程度で済めばラッキーで、下手をすれば60分、80分といった大幅な遅延に遭遇することも・・・これは近距離列車でも、遠距離列車でも起こりえますし、ICEでもそういうことがあります

60分も遅れてしまったらどうしようもないので、遅延が軽微なもので済むよう祈るしかありませんが乗り換えを伴うチケットを予約する際は、乗り換え時間に余裕を持たせることが大切です。特に、乗り換え時間が10分未満のルートを選ぶのはかなりリスキー。路線にもよりますが、ドイツの鉄道は日本よりも本数が少ない傾向にあるので、一度乗り継ぎに失敗したら、次の電車まで一時間待たなければならないこともあるからです。

ドイツ国内を鉄道で移動する際には、多少時間がかかったとしても、乗り換え時間に余裕があり、かつ乗り換え回数ができるだけ少ないルートを選ぶようにしましょう

ドイツの電車には予約席と自由席が混在している

日本の新幹線や特急は、車両単位で指定席と自由席が分かれていますが、ドイツではそうではありません。車両による区別はなく、座席の予約が入っている席があれば、それが指定席になるのです。(ローカル線は予約対象外)

その席が空いているかを見分ける方法は、座席の上部にあるパネル。「Frankfurt Flughafen-Köln Hbf」という記載があれば、フランクフルト空港駅からケルン中央駅のあいだは、誰かがその席を予約しているということです。

パネルが無表示の席を選ぶが、自分の乗車区間が予約済の区間と重なっていない場合は、表示のある席に座っても問題ありません。

席を予約したい場合、オンラインチケット購入時に一緒に予約することもできますし、駅の券売機で座席予約のみを購入することもできます。日本で新幹線や特急を乗り継ぐ場合、便ごとに座席の指定料金がかかってきますが、ドイツの鉄道は、チケットを通しで購入する場合、乗車区間や乗り継ぎの回数にかかわらず、一律4.5ユーロです。

街で最大の駅は「中央駅(Hauptbahnhof)」

ドイツでは、同じ都市に複数の鉄道駅がある場合、最大の駅(メインの駅)は「中央駅(Hauptbahnhof:ハウプトバーンホフ)」という名前を冠しています。旅行者が利用するのはたいてい中央駅なので、これを覚えておいて損はありません。時刻表などでは、しばしば「Hbf」と略されます

「Hauptbahnhof」という呼称を覚えておいたほうがいいのは、降り間違い防止のため。たとえば、大聖堂で有名なケルンには、「ケルン中央駅(Köln Hauptbahnhof)」のほかに、「ケルン・メッセ/ドイツ駅(Bahnhof Köln Messe/Deutz)」というのもあります。ケルン・メッセ/ドイツ駅への到着が先だった場合、「もう着いた」と勘違いして、降りてしまう旅行者がいるのです。

繰り返しますが、中央駅は、「Hauptbahnhof(ハウプトバーンホフ)」です!

「鉄道駅=街の中心」ではない

これは旅のプランニング、特にホテル予約の際に意識したいことですが、ドイツでは、鉄道駅は街の中心ではありません。日本では、鉄道駅は街の中心で、周囲にはショッピング施設やレストランなど、さまざまなものがあって賑わっていますよね。だから、国内旅行であれば、駅の近くに宿を取ればとても便利です。

しかしドイツでは、鉄道駅は街の中心からやや離れたちょっと雑多なエリアという位置づけ。駅が中心部からどれだけ離れているかは街の規模によりますし、短期間の滞在なら駅の近くに宿を取ったほうが便利なこともありますが、大都市では、駅の周辺は雰囲気が良くないことがあるので注意が必要です。

旅行プランや荷物の量に応じて、鉄道駅の中心か街の中心、どちらに宿を取るか決めるといいでしょう。

お得な州内一日チケットがある

ドイツ鉄道は、お得な州内一日チケット(Länder-Tickets)を 販売しています。料金は週によって異なり、23ユーロから

これは、どこかの都市を拠点に、州内を日帰り旅行するときなどに便利。ドイツ鉄道の正規運賃はとても高いので、単純往復するだけでも元が取れることが多々あります。しかもこのチケット、1~5名単位で購入でき、人数が多いほど一人当たりの料金が安くなる仕組みなので、グループ旅行には超お得なのです。

利用可能時間は、平日の場合朝9時~翌日3時、ローカル線(RB、RE等)の2等車のみなど、細かいルールがあるので、利用前に必ず説明を確認しましょう。

駅のトイレは有料だが電車内にトイレがある

電車での移動中、気になるのがトイレ問題。安心してください。ドイツの電車には、短距離ローカル線を含め、ほとんどの車両にトイレがあります。この点は、日本よりも便利ですね。

そのかわり、改札がないこともあってか、駅のトイレは有料です。

突然のホーム変更が発生する場合がある

ドイツを電車で旅していると、突然出発ホームが変わるなどの変更が生じる場合があります

通常の出発ホームは駅に貼ってある時刻表で確認できますが、目的の電車が到着する直前になって、「本日、RE○○号は、3番ホームではなく、4番ホームから出発します」などとアナウンスが入ることがあるのです。

大きな駅では英語のアナウンスもありますが、小さな駅ではドイツ語のみなので、ドイツ語がわからないと電車を逃してしまいかねません。同じホームで電車を待っていた人たちが、急に動き始めたら、要注意。突然のホーム変更の可能性があると認識して、「おかしいな」と思ったら、周囲の人に何かあったのか尋ねるようにしましょう。

おわりに

こうしてみると、ドイツの鉄道は日本と勝手が違うところが多く、これから初めてドイツに行くという人は不安になってしまったかもしれません。

しかし、こうした違いを知っておけば、多くのトラブルは未然に防ぐことができます。遅延ばかりは自分ではコントロールしようがありませんが、大幅な遅延はないことを祈りつつ、もしあったらあったで、「それも旅の経験」として割り切って、思い出にするしかないですね。