「皇帝の大聖堂」の異名をとる、ドイツ2番目の世界遺産シュパイヤー大聖堂

ドイツ最初の世界遺産は、1978年に世界遺産登録されたアーヘン大聖堂。ではその次は?・・・同じく大聖堂で、ドイツ南西部に位置するシュパイヤー大聖堂なのです。

世界最大級のロマネスク建築として知られるシュパイヤー大聖堂は、ドイツで最も美しいといわれるクリプタを擁する「皇帝の大聖堂」。神聖ローマ帝国の権威の象徴だった、壮大な大聖堂に会いに行きましょう。

世界遺産シュパイヤー大聖堂

ドイツ南西部・ラインラント=プファルツ州に属するシュパイヤー。人口5万人程度のこぢんまりとした町の代名詞が、世界遺産シュパイヤー大聖堂です。

シュパイヤー大聖堂は、1030年に神聖ローマ皇帝コンラート2世が、自らの墓所として建設を始めたもの。孫のハインリヒ4世時代の1061年に一旦の完成を見ますが、すぐに大規模な増改築が行われ、1106年に完成するまで、実に70年以上の歳月を要しました。

コンラート2世をはじめ多くの皇帝や王、その妻たち、司教らが眠っていることから、「皇帝の大聖堂」とも称されます

1689年にフランスのルイ14世の軍隊によって焼かれ、修復されたものの、1794年に再びフランス軍によって破壊され、再度修復が行われました。その後、1961年に12世紀の創建当時の姿に戻す大規模な修復工事が行われ、中世の純粋なロマネスク様式を取り戻しています。

1981年には、アーヘン大聖堂に次ぐドイツで2番目の世界遺産に登録され、ドイツ有数の大聖堂として、世界にその名をとどろかせています

シュパイヤー大聖堂へのアクセス

シュパイヤーの町の中心部にあるシュパイヤー大聖堂へは、シュパイヤー中央駅から歩いて15分ほど。シュパイヤーへの起点として最も便利なのが、古城の町ハイデルベルク。

ハイデルベルク中央駅からシュパイヤー中央駅までは、Sバーン(近郊列車)で約50分。フランクフルト中央駅からは、ICE(ドイツ版新幹線)とSバーンまたはRE(快速列車)とSバーンを乗り継いで1時間20分~1時間50分程度。フランクフルトからの日帰りも十分可能です。

世界最大級のロマネスク建築

シュパイヤー大聖堂を訪れた誰もが驚くのが、その大きさ。身廊の幅は37.62メートルですが、奥行きはなんと134メートル。ロマネスク様式の教会としては、世界最大級の規模を誇ります

正面から見るとさほど大きくは感じませんが、斜めや横から見るとその巨大さが実感できるはず。

4本の塔が左右対称に配置され、平面図で見るとラテン十字の形をしているシュパイヤー大聖堂。ドイツ・ロマネスクの先駆けとして、のちのロマネスク様式の発展に多大な影響を与えました。

見る角度によってまったく異なる表情を見せてくれるので、正面から、横からと、さまざまな角度からその威容を楽しんでください。

質実剛健そのものの大聖堂内部

ブロンズレリーフが施された「天国の扉」を通って内部に入ると、「質実剛健」という表現がぴったりの内陣が目に入ります。

世界的に有名なケルン大聖堂などに比べるとずっと簡素な造りですが、ケルン大聖堂に代表されるゴシック様式や、その後のバロック様式など、より装飾性の高い建築様式が発達するのはシュパイヤー大聖堂よりも後のこと。シュパイヤー大聖堂は、ロマネスク様式らしい、シンプルさと力強さに特徴があります

なかでも、赤と白の砂岩が交互に配された列柱の太さが印象的。「十二使徒」にちなんで、柱の間には12のアーチが設けられており、身廊の左右の窓の下には、聖母マリアの生涯を描いた絵が並んでいます

シュパイヤー大聖堂の正式名称は、「聖マリア・聖ステパノ大聖堂(聖マリア&聖シュテファン大聖堂)」。聖母マリアは、シュパイヤー大聖堂の守護聖人であるだけでなく、コンラート2世のザーリア朝の守護聖人でもあります。クワイアの入口にある、美しい聖母マリア像もお見逃しなく。

皇帝らが眠るクリプタ(地下聖堂)

シュパイヤー大聖堂が、「皇帝の大聖堂」とも呼ばれるのは、建設を命じた神聖ローマ皇帝コンラート2世をはじめ、歴代の皇帝や王たちが眠るクリプタ(地下聖堂)があるから

クリプタを備えた教会自体は珍しくありませんが、シュパイヤー大聖堂のものはドイツ最大にして、ドイツで最も美しいとされ、「シュパイヤー大聖堂のハイライトはクリプタ」といわれるほどです

大聖堂への入場は無料ですが、クリプタは有料。クリプタ入口の手前にあるカウンターで、チケットを買ってから地下へと進みましょう。

多くの教会にあるクリプタは小部屋のようですが、シュパイヤー大聖堂のクリプタは、幅35メートル、全長46メートルという大規模なもの。

シュパイヤー大聖堂で最も歴史の古い場所にあたり、赤と白の縞模様が施されたアーチが連なる空間には、幻想的な雰囲気が漂っています。死者が眠るクリプタは、この世とあの世の境目なのかもしれません。

シュパイヤーを一望する塔からの絶景

あまり知られていませんが、実はシュパイヤー大聖堂には、19世紀に描かれた壁画のある「皇帝の広間」や、南西塔内の展望台が見学できるガイドツアーがあります

ガイドツアーへの参加は、時間指定券を購入して指定された時間にミーティングポイントに足を運ぶシステム。ガイドツアーへの参加を希望する場合は、シュパイヤー大聖堂に着いたら、まずは大聖堂のインフォメーションやクリプタのチケットカウンターで催行時間を確認のうえ、チケットを購入しておきましょう。

シュパイヤーの町並みや、大聖堂の一部とライン川を望む塔からの眺めは、まさに絶景。この風景は見ておいて損はないでしょう。

大聖堂ワイン祭り

シュパイヤー大聖堂の西のファサードの前には、「大聖堂の水盤」があります。容量は1560リットル。かつては新任の司教が選出されるたびに、この水盤をワインで満たして町の人々に振る舞っていたといいます

その習慣に由来し、現在では毎年春に「大聖堂ワイン祭り」が開催されます。地元ラインラント=プファルツ州の生産者が自身のワインを紹介するお祭りで、ワイン好きなら見逃せませんね。

大聖堂だけじゃないシュパイヤー観光

日本のガイドブックには大きく取り上げられることのないシュパイヤーですが、大聖堂以外にもいくつもの見どころがあります。

シュパイヤーを訪れるなら、ぜひ見てほしいのが、プロテスタントの「記念教会(Gedächtniskirche)」。16世紀に生まれたプロテスタントを記念して建てられた教会で、優雅なゴシック様式と色鮮やかなステンドグラスが美しい教会です。歴史的重要性はともかく、内装の美しさだけならこちらに軍配が上がるのではないでしょうか。

記念教会と向かい合うカトリックの「聖ヨーゼフ教会(St.Joseph)」や、大聖堂より歴史の古い「三位一体教会(Dreifaltigkeitskirche)」も見応え十分。

いずれもシュパイヤー大聖堂から徒歩圏内です。シュパイヤーの教会には、それぞれに個性があって面白いので、大聖堂だけで終わらないシュパイヤー観光を楽しんでください。

大聖堂へと至るマキシミリアン通り周辺には、カフェやレストラン、ショップがたくさん。おいしいワインが飲めるレストランも多く、ランチにもおすすめです。

世界遺産の大聖堂を抱えるシュパイヤーは、個性豊かな教会めぐりが楽しめるのどかな町。ハイデルベルクから半日で訪れることができるので、ぜひ足を延ばしてみてはいかがでしょうか。