40あまりの世界遺産を有するドイツは、世界遺産の保有数世界5位という世界遺産大国です。
そんなドイツで初めての世界遺産として登録されたのが、西ドイツにあるアーヘン大聖堂。
ドイツの世界遺産といえば、なんといってもケルン大聖堂が有名ですが、その歴史的重要性をとっても、豪華さをとっても、アーヘン大聖堂もまったく引けを取りません。
その荘厳なる美しさは、「皇帝の大聖堂」の称号にふさわしい貫録に満ちあふれています。
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ドイツ初の世界遺産「アーヘン大聖堂」
いまや世界各地に1000以上も存在する世界遺産。ユネスコの「世界遺産」が初めて誕生したのは1978年のことで、この年12の物件が世界遺産として登録されました。
そのうちのひとつが、ドイツ西部の古都アーヘンの大聖堂です。つまり、アーヘン大聖堂は、ドイツ初の世界遺産であるのはもちろんのこと、世界でも最初の世界遺産のひとつなのです。
ドイツに数ある歴史的建造物のなかでも、真っ先に世界遺産に登録されたことが、アーヘン大聖堂の重要性と特別性を物語っています。
アーヘンは、ベルギーとの国境に隣接するドイツで最も西に位置する都市。紀元前3世紀からローマ人が温泉地として利用していたという、古い歴史をもつ町です。
8世紀末、フランク王国のカール大帝が、アーヘンに首都を置きました。カール大帝が786年に建設を始めた宮廷教会こそが、アーヘン大聖堂の前身です。
初期の教会は、現在の大聖堂と比べるとずいぶん小さなものでしたが、建設当時はアルプス以北で最大のドーム建築でした。
アーヘン大聖堂へのアクセス
アーヘンの町へは、ケルンからのアクセスが便利。ケルン中央駅からアーヘン中央駅までは、ICE(ドイツ版新幹線)で約35分、ローカル線快速で約1時間です。
アーヘン中央駅から大聖堂へは、徒歩およそ15分。
あるいは、アーヘン中央駅前から1番、11番、14番、21番、44番、46番のバスで約5分の「エリーゼンブルネン(Elisenbrunnen)」下車。バス停から大聖堂までは徒歩で3分ほどです。
「皇帝の大聖堂」の異名をもつわけ
アーヘン大聖堂は、しばしば「皇帝の大聖堂(Kaiserdom)」と称されます。
その理由は、アーヘン大聖堂にカール大帝の墓所があること、そして、600年の長きにわたって歴代の神聖ローマ皇帝の戴冠式が行われたことにあります。
814年にカール大帝が没すると、彼は自身が建設を始めたこの大聖堂に埋葬され、カール大帝の石棺は現在も内陣ホールの中にあります。
カール大帝の没後、936~1531年までのおよそ600年のあいだに、30人以上の神聖ローマ皇帝がアーヘン大聖堂で戴冠しました。かつてのアーヘン大聖堂は、ドイツの歴史の中心的な舞台だったのです。
異なる建築様式が融合した壮大な姿
アーヘンの中心部で堂々たる威容を見せる、アーヘン大聖堂。見る角度によってまったく異なる印象を残す独特の建築様式は、ドイツにあるほかの教会と比べても異色の存在に感じられます。
それもそのはず。北部ヨーロッパ最古の大聖堂であるアーヘン大聖堂は、ドイツの多くの教会が建てられるよりも前に建設が始まっており、東ローマ帝国の教会建築様式の影響を受けています。
1000年をかけてその装いを調えてきたアーヘン大聖堂は、5~15世紀の東ローマ帝国で発達したビザンティン様式や、古典主義様式、ロマネスク様式など、さまざな建築様式の要素が融合した傑作です。
壮麗さに息を吞む、黄金色の空間
大聖堂内部に足を踏み入れると、黄金のモザイクで彩られた高い天井をもつ、壮麗なる空間に息を吞みます。
壁や天井を覆うモザイクは、きわめて精巧でいつまでも眺めていたくなるほどの美しさ。その豪華さと細やかさは、ため息なしには見られません。
ビザンティン文化の影響が強く感じられるアーチやモザイクの模様が、一般的なドイツの教会とはまったく異なるエキゾチックな雰囲気を醸し出しています。
大聖堂の中心には、高さ32メートルにおよぶ8角形のドームが。これは、熱心なキリスト教徒であったカール大帝が、8という数字がキリスト教において「復活」を意味する数字であったことを重視したためだといわれています。
この8角形のドームには、カール大帝の権力を誇示する意味合いや、国のさらなる発展への願いが込められていたのでしょうか。
まばゆくきらめく「ガラスの家」
中世以降、巡礼地としての重要性が高まったアーヘン大聖堂には、ますます多くの巡礼者が訪れるようになりました。
小さな礼拝堂では手狭になったこともあって、カール大帝の即位600年を記念して、「ガラスの家」呼ばれる礼拝堂が増築されました。
1355~1414年にかけて、約60年を費やして造られたガラスの家の象徴は、高さ約25.6メートル、総面積1000平方メートルを超えるステンドグラス。
ほの暗い空間の中で、まばゆいきらめきを見せる色鮮やかなステンドグラスは、じっと見ていると吸い込まれてしまいそうな、侵しがたい神聖さをたたえています。
アーヘンのお土産「アーヘナープリンテン」
アーヘン大聖堂を訪れたら、記念に買って帰りたいのがアーヘン名物の「アーヘナープリンテン」。
アーヘナープリンテンとは、スパイスとはちみつをたっぷり使った焼菓子で、ドイツのクリスマス菓子として有名なレープクーヘンによく似ています。
なかでも有名なのが大聖堂の近くにある専門店「ノービス(Nobis)」のもので、動物をかたどったプリンテンや、大聖堂をデザインしたプリンテンなど、オリジナルデザインのプリンテンが豊富にそろっています。
おわりに
ドイツ初、そして世界初の世界遺産である、アーヘン大聖堂。
その豪華さに目を奪われるのはもちろんですが、内部には長年にわたって歴史の表舞台であり続けた場所ならではの、荘厳な空気が流れています。
ケルン大聖堂とアーヘン大聖堂は、ICEでわずか35分の距離。西ドイツを訪れたら、ドイツを代表する2つの世界遺産の大聖堂を見比べてみてはいかがでしょうか。