【ドイツの京都】バロックの古都ドレスデン観光でしたい11のこと

東ドイツ観光のハイライトといえば、バロックの都ドレスデン。

「ドイツの京都」とも称される古都の情緒薫るこの町は、壮麗なバロック建築が集まる旧市街にアーティスティックな新市街、名物グルメなど、思った以上に多彩な魅力に満ちています。

旧市街散策だけに終わらない、「ドレスデン観光でしたい11のこと」をご紹介しましょう。

バロックの古都ドレスデン

ドレスデンは、東ドイツ・ザクセン州の州都。

16世紀以降はザクセン王国の都として栄え、エルベ川のほとりにバロック様式の壮麗な建物が建ち並ぶ風景から、「エルベ川のフィレンツェ」「百塔の町」とも称えられてきました。風情ある古都という点から、日本では「ドイツの京都」とも呼ばれます。

ドレスデンのバロック建築の多くは、アウグスト強王として知られるザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト1世の時代に建てられたもの。芸術を愛したアウグスト強王はドレスデンを中心に多くの宮殿を建設し、ヨーロッパ各地から芸術家や音楽家を招聘。ドレスデンを文化と芸術の都に仕立て上げました。

かのゲーテもドレスデンの町並みや芸術を好み、しばしば訪れてはその文化や風景を楽しんでいたといいます。

ほかのドイツの町にはないほどの重厚感、それでいて宮廷都市らしい華やかさも併せ持つドレスデンは、東ドイツ観光のハイライト。周辺エリアの観光も含め、ゆっくりと滞在したい場所です。

ドレスデン城でザクセン王のお宝を目撃

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ザクセン王の居城だったドレスデン城は、現在「緑の丸天井」と呼ばれる宝物館や博物館として使われており、ヨーロッパで最も壮麗な宝物館のひとつといわれています

1階にある「歴史的緑の丸天井」は、「白銀部屋」「象牙部屋」など、材料ごとの部屋に分かれており、その中には金銀や宝石などをふんだんに散りばめたザクセン王家の財宝コレクションが並びます。

見事に復元された内装自体も豪華絢爛で、ザクセン王の権力と財力に圧倒されること間違いありません。

2階にある「新・緑の丸天井」では、16世紀以降の金銀細工や象牙細工などの工芸作品を展示。なかでも金、銀、プラチナなどを贅沢に使った巨大な置物「ムガール帝国皇帝の宮廷」は必見です。

なお、歴史的緑の丸天井は、時間指定の入場券が必要となっているため、事前にインターネットで予約しておくことをおすすめします。

戦禍を免れた「君主の行列」に感動

第ニ次世界大戦下の1945年2月、ドレスデンは連合国軍の大規模な爆撃を受けました。大空襲による被害はすさまじく、なんと町の約85パーセントが破壊されたほど。そのため、現在見られる旧市街の重厚な町並みは戦後復元されたものです。

そんななか無傷で残ったのが、ヨーロッパ最古の武芸競技場だったシュタルホーフに描かれた「君主の行列」

12~20世紀のザクセンの君主や芸術家ら総勢93名を描いた壁画で、長さは101メートル。約2万5000枚ものマイセン焼きのタイルを使用したという壮大なスケールの作品です

それ自体が圧倒的な存在感を醸す大作ですが、奇跡的にドレスデン爆撃を生き延びたことを思うと、さらなる感慨に包まれるはず。

世界で最も有名な天使たちと対面

アウグスト強王の時代に建てられたツヴィンガー宮殿は、ザクセン王国の栄華を伝えるバロック様式の傑作。現在はいくつかのミュージアムとして一般に公開されています。

ツヴィンガー宮殿にあるミュージアムのひとつが、「アルテ・マイスター絵画館」

フェルメールやレンブラント、デューラーなどヨーロッパの古典絵画の名品を所蔵するドレスデンで最も重要な美術館で、なかでも有名なのがラファエロ作「システィーナのマドンナ」です。

聖母の足元に描かれた2人の天使は、単独で服飾雑貨や文房具などにデザインされたため、もはや絵画そのものよりもこの天使たちのほうが有名になり、「世界で最も有名な天使たち」と呼ばれるほど。「システィーナのマドンナ」を知らなくても、どこかでこの天使たちの姿を目にしたことがあるでしょう。

どこか釈然としない様子の天使たちの表情に思わず引き込まれます。

世界最大級の陶器コレクションを堪能

同じくツヴィンガー宮殿にある「陶磁器コレクション」は、世界最大級の陶磁器コレクションとして知られています

アウグスト強王とその息子アウグスト3世が蒐集した18~19世紀の中国や日本の陶磁器のほか、マイセンで作られた名品の数々が一堂に会しており、その数なんと2万点。柿右衛門などの有田焼の大皿など、日本でもなかなか見られない日本の逸品も見ることができます。

白磁の動物たちによる「動物園」などユニークな展示もあり、細やかに表現された動物たちの表情や動きはたまらない可愛らしさ。まるでシャワーのようになっている象の鼻など、その動物を実際に見たことのない昔の職人が作ったからこそのありえない姿にも注目です。

フラウエン教会で平和に思いをはせる

ドレスデン旧市街にある戦争と平和のシンボルとでもいうべき存在が、ノイマルクト広場に建つフラウエン教会。1743年に完成した教会で、ドイツ最大のプロテスタント教会でしたが、第二次世界大戦の空爆によって崩壊してしまいます。

戦後、ドイツ統一までは旧東ドイツに属していたため、教会の復元は重視されず、長らく廃墟と化していました。1994年になってようやく再建が始まり、2005年に完成。本来の美しい姿をよみがえらせました。

再建にあたっては可能な限りオリジナルの資材が使われたため、再建作業は困難をきわめ「世界最大のジグソーパズル」といわれたほど。外観は、オリジナルの古い資材が使われた箇所は黒く、新しい資材が使われた箇所は白くつぎはぎのようになっています。

戦後60年を経て再建が完了したことで、フラウエン教会は戦争の傷跡から平和の象徴へと変わりました。現在教会の塔の上にのせられている十字架は、イギリスから和解の印に贈られたもの。ドレスデン爆撃を行ったイギリス軍兵士の息子によって制作されました。

【世界最大のジグソーパズル】戦後60年で蘇ったドレスデンのフラウエン教会

旧市街を対岸から眺める

ドレスデンの旧市街をめいっぱい堪能するには、旧市街を観光しただけでは十分ではありません。エルベ川に沿ってバロック様式の壮麗な建物が並ぶ旧市街の風景は、対岸に広がる新市街から眺めるのが一番。

旧市街からアウグストゥス橋を渡ってエルベ川の対岸に渡って芝生におりると、そこは旧市街を望む絶好のビュースポット。日中はもちろんのこと夜景も美しく、何度も見たくなる景色が広がっています。

風光明媚なエルベ渓谷をクルーズ

エルベ川の上流域にあたるエルベ渓谷は、およそ20キロにわたって古城や19世紀末の鉄橋といった人工物と自然が融合した美しい渓谷。ブリュールのテラス前の船着場から、昔ながらの蒸気船に乗ってエルベ川を上下する船旅を楽しむことができます。

船上では、城や小さな町、歴史的な蒸気船の造船所などが連なる風光明媚な景色を楽しみながらの食事も可能。また、ピルニッツで下船して、アウグスト強王の夏の離宮として建てられたピルニッツ宮殿を訪ねるのもおすすめです

実は、エルベ渓谷はかつての世界遺産。2004年に、ゼンパーオペラやカトリック旧宮廷教会を含むドレスデン旧市街の歴史地区とともに、「ドレスデン・エルベ渓谷」として世界遺産に登録されました。

ところが、2009年に景観を損ねる新しい橋の建設を理由に世界遺産リストから削除。オマーンの「アラビアオリックスの保護区」に次いで、登録を抹消された史上2件目の世界遺産となりました。

とはいえ、世界遺産であってもなくても、エルベ渓谷の美しさに変わりはありません。

新市街のアートな町並み散策

ドレスデンの見どころは旧市街だけに終わりません。ドレスデンの新市街は、ヒップな若者文化に彩られた流行の発信地。無数のストリートアートに出会える新市街に足を踏み入れれば、重厚な旧市街とのコントラストに驚かされることでしょう。

ドレスデン新市街のなかでも特に見逃せないスポットが、アーティストたちが運営するアート村「クンストホーフ・パッサージュ」。アートが施されたカラフルな建物はアパートとして使われており、アパートに囲まれた中庭に個性的な雑貨ショップやカフェ、レストランなどが集まっています。

敷地内は、エリアごとに「神話」「動物」「変化」「エレメント」「光」といった異なるテーマに分かれており、中庭を囲む建物自体がアート。

ゆったりとした時間を過ごしたいときの食事にもぴったりで、モダンにアレンジしたドイツ料理が楽しめるレストラン「リラ・ゾーセ」では、イチゴがトレードマークのキャニスター「ヴェック」に盛られた軽食やデザートのほか、日替わりのメイン料理が楽しめます。

「リラ・ゾーセ(Lila Soße)」
住所: Alaunstr. 70, 01099 Dresden
公式サイト:https://www.lilasosse.de/

世界一美しい牛乳屋さんを訪ねる

ドレスデン新市街の名物のひとつが、「世界一美しい乳製品のお店」としてギネスブックに認定されている「ドレスナー・モルケライ・ゲブリューダー・プフント」

この長い店名は「プフント兄弟のドレスデンの乳製品店」という意味で、その歴史は創業者のプフント氏が農場から運んできた新鮮な牛乳を町で売り出した1880年にさかのぼります。

外からは何の変哲もないお店に見えますが、店内は天井から壁、床にいたるまでヴィレロイ&ボッホ社の手描きタイルに覆われ、なんとも芸術的。「世界一美しい牛乳屋さん」の称号もだてではありません。

店内では新鮮な牛乳やバターミルクなどの乳製品が楽しめるほか、オリジナルの缶に入ったミルク石鹸や朝食プレートなど、見た目にも美しい雑貨や食品が揃い、ドレスデン土産の調達にもぴったり。

2階にはカフェ・レストランもあり、乳製品を使ったデザートのほか食事も楽しめます。

【ドレスデン】ギネス認定「世界一美しい牛乳屋さん」の魅力 ~お土産にカフェも~
「ドレスナー・モルケライ・ゲブリューダー・プフント(Dresdner Molkerei Gebrüder Pfund)」
住所:Bautzner Str. 79 01099 Dresden
公式サイト:https://www.pfunds.de/
※通常、店内の写真撮影は禁止されています。

ドレスデンの名物ケーキにトライ

その土地ならではのスイーツを味わってみるのも旅の楽しみのひとつ。ドレスデンの名物ケーキとして人気を集めているのが「アイアーシェッケ」

アイアーシェッケはザクセン地方で食べられるチーズケーキの一種で、カスタード風味の生地と、クヴァルク(フレッシュチーズの一種)、硬めのケーキ生地のように、材料や食感が異なる3つの層からなるケーキです

「シェッケ」とはもともと、14世紀ごろの男性の服を指し、これが3つの部分に分かれていたために、同じく3つの層をもつケーキの名前に使われるようになりました。

ドイツのチーズケーキはしっかりとした重さのあるものが主流ですが、アイアーシェッケは軽くふんわりとした柔らかい食感が特徴。素朴で優しい味わいで、飽きのこないおいしさです。

希少なザクセンワインの世界にふれる

日本ではあまり知られていませんが、ドレスデン周辺は知る人ぞ知るザクセンワインの産地。ザクセン地方はワイン生産地の北限に位置し、ドイツにおける13の主要なワイン生産地のなかで最小です。

日本で「ザクセンワイン」の名を耳にすることがほとんどない最大の理由は、生産量が少ないこと。

ザクセンワインの生産量は、ドイツにおけるワイン生産量のわずか0.2パーセントにすぎません。そしてそのほとんどが地元で消費されるために、たとえドイツ国内であっても他の地方ではなかなか手に入らないのです。

この地方の特徴は、昼夜の寒暖差が激しい独特の気候と、ブドウ畑ごとに大きく異なる多彩な土壌。ザクセンワインの大半が辛口で、軽やかな飲み口のものが充実しています。

リースリングとマスカットの交配種である珍しいゴールドリースリングも栽培されており、現地でしか飲めない希少なワインにも出会えます。

レストランでザクセン料理とともにワインを楽しむのはもちろんのこと、ドレスデンから少し足を延ばして「シュロス・ヴァッカーバルト」などのワイナリーを訪ねるのもいいでしょう

おわりに

ドイツには数々の美しい都市ですが、ドレスデンの旧市街には他のどの町とも違う荘重さと気高さがあります。それが、新市街で生まれるヒップでアーティスティックな若者文化と合わさって忘れがたい印象を残します。

モーリッツブルク城やザクセンスイスをはじめ、近郊の見どころも多いドレスデン。どうぞ腰を落ち着けてゆったりと古都の風情を味わってはいかがでしょうか。

水に浮かぶ優雅な狩猟の館、モーリッツブルク城 ~ドレスデンから日帰り旅~

取材協力:ドイツ観光局
Special thanks to Dresden Marketing Board