その美しい町並みから「エルベ川のフィレンツェ」「百塔の町」と称えられてきた、東ドイツの古都ドレスデン。
バロック様式の重厚な建物が並ぶ旧市街が見どころですが、エルベ川の対岸に広がる新市街にも見逃せないスポットがあります。
それがギネスブックにも認定されている「世界一美しい牛乳屋さん」。
いまや観光バスも乗り付けるほどの人気スポットでレトロなオリジナルデザインをあしらった雑貨はドレスデン土産にぴったり。2階のカフェでは食事やお茶も楽しめます。
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ギネス認定「世界一美しい牛乳屋さん」
「世界一美しい牛乳屋さん」として知られるのが、ドレスデンにある「ドレスナー・モルケライ・ゲブリューダー・プフント(Dresdner Molkerei Gebrüder Pfund)」。
この長い店名は「プフント兄弟のドレスデンの乳製品店」という意味で、「世界一美しい乳製品店」としてギネスブックにも認定されています。
「世界一○○」と呼ばれるスポットは数あれど、「ドレスナー・モルケライ・ゲブリューダー・プフント」は自称でも俗称でもなく、ギネスが認めた正真正銘の世界一。その歴史は19世紀にさかのぼります。
創業者のパウル・プフントさんが、奥さんとともに牛の飼育を始め、町で農場から運んできたばかりの新鮮な牛乳を売り始めました。
1880年には「ドレスナー・モルケライ・ゲブリューダー・プフント」を設立。やがて、牛乳のみならずチーズやバター、ヨーグルトといった乳製品の販売も手がけるようになり、事業を拡大します。
1891年には現在の場所に店舗を構え、1998年には「世界一美しい乳製品店」としてギネスブックに認定。やがて観光スポットとしても人気を集めるようになったのです。
「世界一美しい牛乳屋さん」へのアクセス
「世界一美しい牛乳屋さん」こと「ドレスナー・モルケライ・ゲブリューダー・プフント」は、ドレスデンの新市街(ノイシュタット)にあります。
ドレスデン観光の中心となる旧市街からは歩くと遠いので、トラム(路面電車)の利用がおすすめ。11番トラムの停留所「Pulsnitzer Straße」から徒歩すぐです。
旧市街からは、ツヴィンガー宮殿やショッピングモール「アルトマルクトギャラリー」からもほど近い停留所、「Postplatz」から11番トラムに乗ることができます。
なお、11番トラムは、新市街のドレスデンノイシュタット駅前などにも停車します。
「ビレロイ&ボッホ」のタイルで埋め尽くされた店内
「世界一美しい牛乳屋さん」は、いったいどれほどまでに美しいのか・・・
外観だけを見れば、これといって目を引くところのない、普通のドイツの食品店です。ところが、ドアを開けた瞬間、見事な装飾タイルに彩られた空間が目に飛び込んできて、思わず息を吞んでしまうほど。
天井から壁、床にいたるまで、豪華なタイルで覆われた空間は実に幻想的です。
内装を手がけたのは、世界三大陶磁器メーカーのひとつに数えられるビレロイ&ボッホ。1748年にフランスで創業され、その後ドイツに本社を移したビレロイ&ボッホは世界でも有数の名窯で、かつてはオーストリア王室御用達、現在もルクセンブルク大公国の公室御用達ブランドとして知られています。
すべて手作業で制作されたというタイルには、動物や植物、天使などさまざまなモチーフが登場し、見ていて飽きることがありません。
牛乳屋さんというよりも、美術館や宮殿かと思うほどに豪華で芸術的な空間ですが、一方で牛乳屋さんらしくほのぼのとした牧場の風景を描いたタイル画も。
立体的な細工が施されている箇所もあり、装飾の細やかさと色鮮やかには脱帽です。
店内に漂う濃厚なチーズの香り
スタッフが立つカウンターのショーケースには、世界各国のさまざまなチーズが並んでいます。美術館のように美しい店内で、チーズを売っているというミスマッチがなんだか不思議。
店内には濃厚なチーズの香りが漂います。チーズの香りに包まれることに慣れていない日本人のなかには、短時間で逃げ出してしまう人もいるとか。
ドイツならではのバターミルクにトライ
店内では、新鮮な牛乳をその場で味わうことができるほか、日本では飲めないという「バターミルク」を飲むことができます。聞き慣れない名前ですが、「バターミルク」とは、バターを製造する過程で、牛乳からバターを分離させた後に残った液体のこと。
「バター」と名が付くだけに、こってりとした高カロリーの飲み物をイメージしがちですが、実際には逆。バターを造るための脂肪分が取り除かれているために、普通の牛乳よりも脂肪分やカロリーが低いのです。
バターミルク自体にはほとんど味がないので、ドレスナー・モルケライ・ゲブリューダー・プフントでは、ブレンド用のフルーツジュースが用意されています。
風味や食感は、飲むヨーグルトのよう。やや酸味のあるすっきりとした味わいで、ヨーグルトが好きな人ならおいしく味わえるはずです。乳製品が充実しているドイツだからこそ、日本ではお目にかかれないドリンクをお試しあれ。
オリジナルパッケージの雑貨をお土産に
「世界一美しい牛乳屋さん」を訪れた記念が欲しい!とはいえ、牛乳やチーズを日本に持って帰るわけにはいきません。
観光客の来店が多いだけに、「ドレスナー・モルケライ・ゲブリューダー・プフント」では、レトロなデザインが施されたオリジナル雑貨や食品など、お土産にぴったりの品物が揃っています。
チョコレートやクッキー、キャンディー、自家製ジャム、リキュールなどの食品に加え、牛乳を使った石鹸や入浴剤にスキンケア用品、さらにはポストカードやエコバッグ、朝食プレートなど、レトロ可愛いアイテムが目白押し。がっちりと女心をつかんで離しません。
なかでも人気があるのが、オリジナルのデザインが施されたレトロな缶に入った牛乳石鹸。昔懐かしい生活風景を描いた缶は思わず一目惚れしてしまうほどの可愛らしさで、女性へのお土産にすればきっと喜ばれるはずです。
ノスタルジックなイラストが描かれたメタルカードもおすすめ。3枚で10ユーロと値段も手ごろなうえ、インテリアとして使っても素敵です。
2階のカフェで名物アイアーシェッケを
1階の店舗には、観光バスの団体客がやってくることもあり、タイミングによっては非常に混雑しています。
しかし、入口がわかりにくいからなのか、2階にあるカフェ・レストランは比較的空いていて、ゆったりとくつろげる穴場スポット。「世界一美しい牛乳屋」さんの2階にカフェ・レストランがあることは、意外にも知られていないようです。
「カフェ入口」といった看板などがないため戸惑ってしまうかもしれませんが、1階の店内の奥にある階段を上るだけ。2階のカフェ・レストランでは、新鮮な牛乳に加え、朝食セットやザクセン料理、乳製品を使ったスイーツなどがいただけます。
なかでもおすすめなのが、ドレスデン名物のチーズケーキ「アイアーシェッケ」。ザクセン地方で食べられるアイアーシェッケは、ドイツの一般的なチーズケーキに比べて軽い食感が特徴です。
日本のスフレチーズのようなフワッとした優しい食感に加え、ドイツらしい濃厚なチーズの層も楽しめる飽きのこないおいしさです。
おわりに
「世界一美しい牛乳屋さん」の称号にも恥じない美しさと芸術性を誇る「ドレスナー・モルケライ・ゲブリューダー・プフント」。
日本のガイドブックにはまだあまり大々的には紹介されていませんが、ここがドレスデンの定番観光スポットになるのは時間の問題でしょう。
「ドレスナー・モルケライ・ゲブリューダー・プフント(Dresdner Molkerei Gebrüder Pfund)」
住所:Bautzner Str. 79, 01099 Dresden
営業時間:月~土10~18:00、日祝10:00~15:00
公式サイト:https://www.pfunds.de/
※通常、1階店内の写真撮影は禁止されています。
取材協力:ドイツ観光局