ロマンティック街道の起点、ヴュルツブルクの観光スポットBEST8

ロマンティック街道の北の起点、マイン河畔の古都ヴュルツブルク。

ドイツのロマンティック街道を旅する人の多くは、一度はこの町を訪れることでしょう。レンガ色の歴史的建造物が建ち並び、重厚なたたたずまいが魅力のこの町は、古都の情緒たっぷりです。

どこか京都にも似た心安らぐ古都、ヴュルツブルクで訪れたい観光スポットBEST8をご紹介します。

司教都市として栄えた古都・ヴュルツブルク

フランケン地方(バイエルン州北部)の中心都市、ヴュルツブルクドイツの観光街道としてあまりにも有名なロマンティック街道は、この地からはじまります

町の歴史は古く、紀元前1000年ごろにはすでにケルト人がマイン川沿いに城砦を築いていたといわれています。やがて中世に入ると、ヴュルツブルクは宗教都市としての存在感を増すようになります。

7世紀、アイルランド出身の布教者、聖キリアンがこの地で殉教を遂げ、8世紀には司教座が設けられました。以来、ヴュルツブルクは歴代の領主司教のもとで、司教都市として繁栄し、町には数々の教会や宮殿が建てられることになるのです。

ヴュルツブルクの美しさは、歴史上の人物をも魅了してきました。天才音楽家モーツアルトは、ヴュルツブルクを「美しく、華やかな町」とたたえ、文豪ゲーテはヴュルツブルクをドイツで最も美しい都市のひとつに数えています

ゆかりの有名人も多く、長崎の出島で活躍した医師シーボルトは、ヴュルツブルクの出身。X線を発見し、ノーベル物理学賞を受賞したレントゲンはヴュルツブルク大学で学んでいます。

ヴュルツブルクへのアクセス

フランケン地方の中心都市だけに、アクセスは良く交通手段には事欠きません。

フランクフルトからはICE(ドイツ版新幹線)で約1時間10分、ミュンヘンからはICEで約2時間。鉄道以外では格安バス会社のFlixbusがヴュルツブルクとドイツの主要都市を結んでいます。

レジデンツ

数々の歴史的建造物を抱えるヴュルツブルクのなかでも、絶対に見逃せないのが、世界遺産にも登録されているレジデンツ

もともと、1720~1744年に大司教の宮殿として建てられたもので、その壮麗さから「南ドイツ・バロックの傑作」と呼ばれています。

レジデンツ建設前、歴代司教はのちに紹介するマリエンベルク要塞に居住していました。18世紀になって政局が安定してくると、防衛目的の堅固な要塞は必要なくなり、自らの権力と財力を誇示するような豪華な宮殿を建てたのです。

基本設計は、当時「バロックの天才建築家」と呼ばれたバルタザール・ノイマンが担当。ヨーロッパでも有数のバロック宮殿です。かのナポレオンもこのレジデンツに宿泊し、その素晴らしさをたたえたとか。

レジデンツの内部で特に有名なのが、「階段の間」の天井に描かれた世界最大のフレスコ一枚画「オリュンポス山と四大陸」

ヴェネツィアの画家ティエポロの手によるもので、長さ30メートル、幅19メートルという壮大スケールで描かれたフレスコ画はまるで世界の天井のよう。豪華な大階段とあいまって、レジデンツを訪れた人々を圧倒します。

ほかにも、金の装飾や天井画で豪華に装飾された「皇帝の間」、ガイドツアーでしか見学できない「鏡の間」など、次々と現れる華麗なる空間に夢心地になることでしょう。

内部のみならず、レジデンツに面したホーフ庭園(宮廷庭園)も必見。美しく剪定された緑や彫像の数々が印象的で、庭園から見るレジデンツもまた絵になります。

ホーフ庭園は日中無料で開放されており、地元の人々の憩いの場にもなっています。

アルテ・マイン橋

マイン川に架かるアルテ・マイン橋は、ヴュルツブルクのアイコンのひとつ。このアルテ・マイン橋が最初に完成したのは、1133年のこと。それによって一年中マイン川を渡ることができるようになり、遠隔地交易が活発になりました。

現在見られる橋は18~19世紀に造られたもので、橋の両側には等身大よりも大きい聖人や君子の像、12体が並んでいます。

ヴュルツブルクは、フランケンワインの名産地。アルテ・マイン橋のたもとのワインショップやレストランではグラスワインを販売していて、橋の上で自由にワインを飲むことができます。

ドイツの古都の風景を眺めながら、「男性的」とも称されるキリリとしたフランケンワインを一杯・・・なんて素敵な青空バーなんでしょう。

特に夏の夜は、橋の上はワインを片手におしゃべりを楽しむヴュルツブルクッ子でいっぱい。アルテ・マイン橋は、観光客だけでなく地元の人々にも人気のスポットなのです。

マリエンベルク要塞

ヴュルツブルクの町を見下ろす高台にそびえるのが、マリエンベルク要塞。アルテ・マイン橋から眺める、聖人像とマリエンベルク要塞のある風景は、ヴュルツブルクを代表する景観です。

マリエンベルク要塞の起源は、ケルト人の避難所にさかのぼり、1253~1719年までは歴代の大司教の居城として使われました。

豪華さが際立つレジデンツとは異なり、マリエンベルク要塞は堅固な防衛施設。ここは司教の世俗権力を維持するための砦であり、司教による支配の象徴でもあったのです。

マリエンベルク要塞は複数の建物から成り立っており、中庭にたたずむ聖母マリア教会は、ドイツ最古の教会のひとつといわれています。

美術好きなら見逃せないのが、「マインフランケン博物館」。ここには「アダムとイヴ」をはじめ、ドイツが生んだ天才彫刻家、リーメンシュナイダーの作品が多数展示されています。

リーメンシュナイダーはヴュルツブルクの市長を務めていた時期もあったことから、ヴュルツブルクとその周辺には彼の作品が数多く残されているのです。

博物館に興味がある人もない人も、誰もが必見なのが、司教の休息場所や展望バルコニーとして使われていたという領主庭園からのパノラマ

バロック様式の庭園からは、レンガ色の建物のあいだに数々の塔が顔をのぞかせる、情緒たっぷりのヴュルツブルクの絶景が楽しめます。

マリエンベルク要塞は、アルテ・マイン橋から坂道を上ること約15分。この風景を見るためだけでも頑張って歩く価値があります。

聖キリアン大聖堂

ヴュルツブルク旧市街の中心、マルクト広場にはいくつもの歴史ある教会が並んでいます。その代表格が、ヴュルツブルクで殉死し、この地方の守護聖人となった聖キリアンに捧げられた、聖キリアン大聖堂

11~12世紀に建設されたドイツを代表するロマネスク様式の聖堂で、現在の姿は第2次世界大戦後に再建されたものです。複雑なシルエットを描く大聖堂は、見る角度によってまったく異なる表情を見せてくれるのも魅力。

内部は時代とともに移り変わってきた建築様式の影響を受けており、ロマネスク様式を基調としつつも、バロック様式の華麗なスタッコ(化粧漆喰)装飾も見られます。

この大聖堂の見どころは、リーメンシュナイダーが手がけたルドルフ・フォン・シェーレンベルク領主司教の墓碑。顔のたるみや手の皺、衣のヒダにいたるまで、精緻な表現力は圧倒的です。

ノイミュンスター教会

聖キリアン大聖堂に隣接して建つのが、豪華なファサードに目を奪われるノイミュンスター教会

クリプタ(地下聖堂)は聖キリアンが命を落とした場所と伝えられ、祭壇の手前には聖キリアンとその従者であるコロナトとトトナンの彫像が祀られています。

教会の内部装飾は、フュッセン近郊にある世界遺産のヴィース教会手がけたドミニクス・ツィンマーマン兄弟によるもので、白を基調とした優美な空間が広がっています。

そして、ここにも必見のリーメンシュナイダー作品が。

アーモンド形の目と、S字にくねった身体のライン、衣服の美しいドレープなど、リーメンシュナイダーの手腕がいかんなく発揮された聖母子像には、見る者の心をとらえる不思議な吸引力があります。

また、教会から続く中庭には、ミンネゼンガー(中世の恋愛歌人)として知られるヴァルター・フォンデア・フォーゲルヴァイデのお墓があります。「このお墓に花を供えると恋愛の悩みが軽減する」という言い伝えがあり、ヴュルツブルクの恋愛パワースポットして密かに人気を集めているとか。

マリエンカペレ(聖母マリア礼拝堂)

マルクト広場に面して建つ、赤と白のコントラストが鮮やかな教会が、マリエンカペレ(聖母マリア礼拝堂)。かつてユダヤ教のシナゴークがあった場所に建設された、後期ゴシック様式のホール式教会です。

尖塔のてっぺん、高さ70メートル地点からは、黄金に輝く聖母像がマルクト広場を見守っています。

正面入口にはリーメンシュナイダーの傑作、アダムとイヴの彫像(レプリカ、オリジナルはマインフランケン博物館に展示)があり、内部には、やはりリーメンシュナイダーの作の騎士コンラート・フォン・シャウムベルクの墓碑があります。

ユリウスシュピタール

ユリウスシュピタールは、ドイツで最も有名なワイン醸造所のひとつ。

1576年に当時の司教、ユリウス・エヒター・フォン・メスペルブルンによって設立され、ワインの醸造だけでなく、病院や養老院の運営も行っています

ユリウスシュピタールが生み出すフランケンワインの品質は高く評価され、世界各地に多くのファンがいるほど。

建築家のアントニオ・ぺトリーニによって設計されたバロック様式の豪華な建物や、宮廷彫刻家ヤコブ・ファン・デア・アウヴェラによる噴水は圧巻。

敷地内には司教館をはじめさまざまな建物があり、ワインテイスティングや古い木樽のセラーが見学できるほか、併設のレストランでは料理とともに自家製ワインを楽しむこともできます

グラスワインは100ミリリットルから注文できるので、スタッフに好みを伝えながら、異なる品種を飲み比べてみるのもいいでしょう。

「ロマンティック街道の起点」の看板

世界遺産レジデンツの脇には、「ロマンティック街道の起点」の看板がひっそりとたたずんでいます。(道路に面した側)

北はヴュルツブルクから、南はフュッセンまで、ロマンティック街道を縦断する予定なら、ここヴュルツブルクで「ロマンティック街道の起点」の看板を見ておきたいもの。

日本語も表記されているのがなんだか嬉しいですね。もちろん、フュッセンには「ロマンティック街道の終点」と書かれた門がありますので、こちらもお見逃しなく。

おわりに

日本ではさほど知名度の高くないヴュルツブルクですが、長い歴史をもち、司教都市として栄華を誇っただけに、町そのものが博物館のよう。中世の面影を残す町並みに、現代の生活が融合したとても心地よい町です。

ローテンブルクをはじめとする、カラフルでメルヘンチックな町とはまた違ったドイツの古都の趣に触れてみてください。

協力:ドイツ観光局
Special thanks to the city of Würzburg